笑府
兄が弟をつれて人を訪問した。席につくと、西域の乾葡萄がお茶請けに出された。弟が兄に、
「これは何というものなの」
ときくと、兄は、
「ばか」
といって弟を制した。乾葡萄のあと、橄欖(かんらん)が、やはりお茶請けに出された。すると弟がまた兄に、
「これは何というものなの」
ときいた。兄がまた制して、
「ばか」
というと、弟は怪訝(けげん)な顔をした。
帰り道で弟がいった。
「兄さん、さっき食べたばかのうち、はじめのばかは甘酸っぱくてうまかったけど、二番めのばかは、渋くてまずかったねえ」