笑府
いつも女房の尻に敷かれている男、思うように女房が金をくれないので、あるとき一計を案じ、一物をうしろへまわして布できつくしばりつけ、
「この前、急に金がいったとき、おまえにたのんでもくれなかったものだから、一物を銀一両で質に入れてしまったよ」
といった。女房、手をのばしてさぐってみたが、すべすべとして何もないので、びっくりして、
「いますぐ請け出しておいでよ」
と、銀子(ぎんす)二両を渡した。
「一両だといったのに、どうしてこんなにたくさんくれるのだ」
と男がいぶかると、女房のいうには、
「もし質屋に、ほかの人の質流れでもっと大きいのがあったら、つけかえてきてほしいからだよ」