笑賛
恐妻家の役人に、友人がいった。
「酒を飲んで酔っぱらって、気が大きくなったところで家へ帰り、何かいいがかりを見つけて思い切り奥さんをぶん殴るのだよ。そうすれば奥さんが君をこわがるようになる」
恐妻家はなるほどと思い、友人に教えられたとおりにしてみたところ、はたして妻はこわがった。
翌朝、妻が夫にいった。
「あなたは普段はとてもおとなしい人なのに、昨夜はどうして急にあんなひどいことをなさったの」
「ひどいことをした? 酔っぱらっていたので何もおぼえていない」
夫がそういうと妻はにわかに態度を変えて、
「男のくせに、酔っぱらって妻を殴るとは卑怯じゃありませんか。しかも何もおぼえていないなんて、いよいよゆるせません」
といい、いきなり夫に殴りかかった。
「おれのせいじゃない。友達がそうすればよいと教えてくれたものだから」
と夫がいうと、妻はますます怒って、
「その人もわるい人だけど、あなたは役人でしょう。役人のくせにそんなわるい人のいうことをきくなんて、あなたの方がもっとわるい。殴られるのは当然です」
といい、さんざんに夫を殴った。