笑府
ある武官、いつも女房をおそれて小さくなっているので、友人が見るに見かねていった。
「君の奥さんは君の威風堂々とした姿を見たことがないので、君をなめているんだよ。男は胸を張って堂々としていなければいかん」
武官はそれをきいてもっともだと思い、さっそく鎧甲(よろいかぶと)に身をかため、剣を杖突き、胸を張って家へ帰った。女房がそれを見て、
「何をするのよ、そんな恰好をして」
とどなりつけると、武官は思わずひざまずいて、
「いや、なに、いまから教練に行こうと思うのですが、行ってもよろしいでしょうか」