笑府
李存孝は唐末五代の武将で、虎退治をしたことで有名な人である。
さて、ある男、女房に殴られて友人のところへ逃げて行き、
「なんとか女房の気を静める方法はないものかねえ」
と相談した。すると友人は胸を張って、
「君は気が弱すぎる。女房などというものは、おどかしておとなしくさせればいいんだよ。一つ、虎の恰好でもして奥さんをおどかしてやったらどうかね」
そのとき衝立(ついたて)のかげでそれをきいた友人の女房が、
「虎の恰好をしたら、どうだっていうのよ」
とどなった。すると友人はびっくりしてひざまずき、
「わたしが虎の恰好をしたら、あなたは李存孝さんです」