雪濤諧史・笑府
ある夜、女房が部屋に男を引き入れているところへ、亭主が帰ってきた。男は窓から飛び出して、逃げて行く。亭主は男が残して行った靴を拾い、それを枕にして寝て、
「夜があけたら、この靴を証拠にしてお上(かみ)に訴えてやる」
といった。女房は亭主がぐっすりと寝入ったすきに、男の靴を亭主のはいていた靴と取りかえておいた。
翌朝、亭主は起きて靴を見たが、いくら見ても自分の靴である。そこで女房に謝っていった。
「おまえを疑って、すまなかった。昨夜窓から飛び出して行ったのは、あれはこのおれだったのだ」