笑苑千金
ある漁師の女房、なかなかの器量よしで、隣家の若者とよい仲になっており、かねてから「亭主が夜の漁に出ている留守にくるように。そのときは猫の鳴き声をまねして確かめるように」と示しあわせてあった。
ある夜、亭主が家にいるとき、若者がやってきて猫の鳴き声をまねたので、女房は大きな声で、
「猫ちゃん、きてはだめ! 今夜はお魚を取りに行かなかったのよ。あしたの晩、またおいで」
といった。すると若者はあわてて、うっかり、
「はい」
と返事をした。うろたえてごまかそうとしている女房に亭主がいった。
「あれは二本足の猫だな」