笑府
ある家の下男の女房、大旦那とも若旦那とも通じていた。ある日、若旦那が部屋にきて、いっしょに寝台へ上ろうとしていると、大旦那がやってきて扉をたたいた。女はそこで若旦那を寝台の下へ隠し、扉をあけて大旦那を迎え入れた。すると外に靴音がして、外出していた亭主が帰ってきたらしい様子。大旦那があわててうろうろしだすと、女は、
「大丈夫です。その棒を持って、怒ったふりをして部屋から出て行ってください。あとはわたしがうまくやりますから」
という。大旦那が女のいうとおりにして部屋を出て行くと、ちょうど亭主がやってきて、
「どうしたんだ」
ときく。女は、
「若旦那さまが何か大旦那さまのお気にさわることをなさったらしく、大旦那さまが棒を持ってさがしにいらっしゃったのよ」
「それで若旦那はどこにいらっしゃる」
と亭主がきくと、女は寝台の下を指さして、
「大旦那さまには内証だけど、そこに隠れていらっしゃるわ。逃げていらっしゃったので、かくまってあげたのよ」