笑倒
『魏書(ぎしよ)』の刑罰志に、犯罪者の妻を没収し、妓院を設けて淫を売らせたということが記されている。そのようにして妻を没収された者を楽戸(がくこ)といった。楽戸はみな緑の頭巾(ずきん)をかぶらせられたことから、その頭巾が亀の頭に似ていたため、彼らのことを亀といった。つまり亀とは、妻を他人に犯されながら坐視している者という意味で、最大の罵語(ばご)であった。そこから一般に、妻を寝取られた男のことを亀といい、転じて大馬鹿野郎という意味にも使われるようになった。
さて、すこぶる浮気なたちの女がいた。何度嫁に行っても必ず離縁されて帰ってくるので、ある人が、
「いつも、いつも、どうしてうまくいかないのかねえ」
というと、その女、
「わたしは生れつき運がわるくて、どこへ嫁に行っても必ず相手が亀になってしまうのよ」