笑府(江戸、須原屋板)
ある貧乏な先生、住込みの家庭教師の口にありついたが、下男をつれて行かなければならない。しかし下男を雇う金などないので、仕方なく女房を下男に仕立てて、つれて行った。
さてその家に着き、食事をふるまわれた後、主人がいった。
「今夜は息子を先生といっしょにやすませましょう。下男のかたは別室で、拙宅の下男といっしょに寝ていただきます」
先生はどうすることもできず、主人のいう通りにした。
さて翌朝、息子が父親にいった。
「先生はよほど貧乏だとみえて、服の下はまるはだかで、何もつけておられませんでした」
すると下男も主人にいった。
「つれてこられた下男もよほど貧乏だとみえて、服の下はやはりまるはだかで、おまけに一物さえもございませんでした」