笑府
旅の僧が尼寺へ行って、一夜の宿をたのんだ。尼僧は、
「この庵は手狭でございます。その上、尼寺ですから、お泊めするわけにはまいりません」
といってことわったが、旅の僧が、
「わたしは女色を絶っている僧侶です。ご心配は無用です」
というので、泊めることにした。
その夜、尼僧は旅の僧にたずねた。
「あなたは、女色をお絶ちになってから、長くなられますか」
「さよう、長くなります」
「どれほど長くなるのですか」
「一年に一寸は長くなります」
「お絶ちになってから何年になりますか」
「七、八年になります」
尼僧はそれをきくと、手を合わせていった。
「阿弥陀仏(ま あ)、すばらしい!」