笑府
頭虱(あたまじらみ)が毛虱に招待されて下へ行ったところ、ちょうど家主(やぬし)の女性が一儀を行なうところで、頭虱はその一部始終を見てきた。
帰ってくると、仲間の頭虱たちがたずねた。
「下には何かおもしろいことでもあったかい」
「うん。はじめ黒松の林の中でご馳走になっていたら、一人の和尚に出会った」
「その和尚がどうした」
「おかしな和尚でね、はじめはぐにゃぐにゃしていて、まるで病気にかかった和尚みたいだったが、そのうちにしゃんと堅くなって、少林寺(しようりんじ)の和尚のように逞しくなり、林の下の谷へ出たり入ったりしだした。そのありさまはまるで世帯持ちの和尚のようないそがしさだったが、やがて突然、へどを吐き出したところを見ると、酒に酔った和尚みたいだったよ」
「いったいどういう和尚だろうな」
「そのあとで嚢(ふくろ)を引きずってどこかへ行ってしまったから、やはり行脚の和尚だろうな」