笑林広記
ある道士が、女を迷わすという薬を売っていた。それを女の体へふりかけると、自然に女がよろめいてくるという薬である。
ある日、町の若者がその薬を買いに行った。道士は出かけていて家にはおらず、その女房が薬を渡した。若者は薬を受け取ると、それをその女にふりかけ、女のあとについて行って部屋の中へはいった。女は仕方なく若者のいうままになった。
道士が帰ってきてから、女房がありのままに事の次第を話すと、道士は怒って、
「誰がそいつとしろといった!」
とどなりつけた。すると女房はいい返した。
「だって、わたしがもしいやだといったら、おまえさんの薬がきかないということになるじゃないの」