笑府
ひどく貧乏な夫婦がいた。女房はなかなかの器量よしだったので、言い寄ってくる男もあったが、亭主が承知しなかった。ところが、亭主は食い物をさがしに出かけて行くとまる一日帰ってこないことが多かったので、女房はそのあいだに体を売って、どうやら食いつないでいた。
ある日、外から帰ってきた亭主がひもじいひもじいとわめきたてるので、女房が、
「この前わたしを世話しようという人があったとき、おまえさんが承知しなかったからだよ」
というと、亭主は黙ってしまった。どうやら後悔している様子なので、女房は米の飯と肉の料理を出してやった。亭主はびっくりし、よろこんですっかり食べてしまってから、
「どうしたんだ」
ときいた。女房が、
「ひもじくてならなかったので、ちょっと体を貸したの」
というと、亭主は膝を乗り出して、
「その人は、男色の方は好きじゃなかろうか」