笑海叢珠
ある人が下痢をわずらい、長いあいだなおらなかった。最後にかかった医者は、薬はこれまでの医者が飲ませたのと同じ物を使ったが、ただ煎薬(せんやく)だけはちがって、川岸の杭(くい)を欠いてきてよく煎じて飲むようにといった。病人が、
「人参(にんじん)や附子(ふし)や肉豆〓(にくずく)などを飲んでもなおらないのに、杭なんか飲んでもどうにもならないでしょう」
というと、その医者のいうには、
「医は意なりと申します。杭は大きな川の水でもせきとめることができるのです。小さな穴がせきとめられないはずはありますまい」