笑海叢珠
二人の男が、畑の真中の大きな石を取りのけようとしていたが、石はびくとも動かない。通りかかった一人の僧侶がそれを見て、
「拙僧が取りのけて進ぜましょうか」
といった。二人がよろこんで頭を下げ、
「よいところへおいでくださいました。お願いいたします」
というと、僧侶は、
「まず拙僧にお斎(とき)をふるまっていただきたい。そのあとで取りのけて進ぜましょう」
という。二人は僧侶を家へつれて行き、お斎をふるまってから、またいっしょに畑にやってきた。すると僧侶は、石に背中を向けてしゃがみ込み、
「さあ、拙僧が背負って行くから、お二人で拙僧の背中へ石を載せてくだされ」
という。二人が、
「わしたちには動かせないので、おまえさんにたのんだのじゃないか」
というと、僧侶は、
「おまえさんたちが背負わせてくれなければ、拙僧とて背負うわけにはまいらぬ」