笑府
ある肉屋、豚の婆肉ばかり並べていたが、小僧に向って、
「婆肉だといってはならんぞ」
ときびしくいいつけた。
しばらくすると客がきた。小僧は客に見破られることをおそれて、
「うちでは婆肉は売っておりません」
といった。すると客は気づいて、買わずに行ってしまった。主人が怒って、
「あれほどいっておいたのに、なぜこっちから疑われるようなことをいうんだ」
といい、小僧を殴った。
やがてまた客がきた。小僧が黙っていると、客は肉を見て、
「この肉はなんだか婆肉のようだな」
といった。すると小僧は、
「こんどはわたしがいったのじゃありませんからね」
といって主人を見た。