笑府
ある欲張りな男、冥土では豚肉の値がよいときき、肉屋にある肉を全部買い占め、首をくくって死んで、肉を売りながら十八層地獄まで行った。ところがなかなか門を通してくれない。まだ売れ残った肉がたくさんあるのに、中へはいらなければ売りそこなってしまうと思い、門番にたんまり賄賂(わいろ)をつかってようやく入れてもらった。中には大勢の亡者がいたので、大儲けができるぞとほくそえんで荷をおろすと、亡者たちが怪訝(けげん)な顔をしていった。
「おまえ、場所をまちがえたようだな。ここの者はみんな精進を守っているのだ。肉なんか一切れも売れやしないよ」