笑府
閑静好きの人がいたが、あいにく住居が鍛冶屋と鍛冶屋との間にあったので、いつも、
「あの二軒が引越してくれたら、一杯おごってやってもよいのだが」
といっていた。すると、ある日、二人の鍛冶屋がやってきて、
「このたび、わたしたち引越しをすることにいたしました。かねがねわたしたちが引越しをしたら一杯おごるとおっしゃっていましたので、ご挨拶にあがった次第です」
といった。
「いつ引越しをするのですか」
ときくと、二人はいっしょに、
「明日です」
といったので、大いによろこんで、さっそく二人に酒をふるまった。酒がすんでから、
「お二人はどこへ移られるのですか」
とたずねると、
「わたしはこの人の家へ、この人はわたしの家へ引越します」