王と甘の字
啓顔録
唐の甘洽与(かんこうよ)と王仙客(おうせんかく)とは仲がよかった。あるとき、互いにその姓をからかいあったが、先ず甘洽与が、
「王さん、あんたの姓はもとは『田』だったにちがいない。あんたの顔がぶくぶくとふくらんできたので、両側が取れてしまったんだ」
というと、王仙客はすかさず、
「甘さん、あんたの姓はもとは『丹』だったにちがいない。あんたの頭に血がめぐらないので、足を上にして逆立ちしてしまったんだ」