啓顔録
北斉の徐之才(じよしさい)は後に西陽(せいよう)王に封ぜられた人であるが、あるとき尚書の王元景(おうげんけい)がその名をからかって、
「『之才』というのはどういう意味かね。わたしの見るところでは『ノ』を加えて『乏才(ぼうさい)』(才に乏(とぼ)し)とすべきだと思うけどな」
というと、徐之才はすかさず、王元景をからかって、
「『王』という字は、『言』(ことば)をつけると『(きよう)』(たぶらかす)になり、『木』に近づけると『枉(おう)』(まがる)になり、『犬』に近づけると『狂(きよう)』(くるう)になり、首と足をつけ加えると『馬』になり、角(つの)と尻尾をつけ足すと『羊』になりますな」
といった。
王元景は黙ってしまった。