雪濤諧史
呉中(ごちゆう)(蘇州)の某尚書(しようしよ)が沐浴しているとき、一人の客が訪ねてきたので、沐浴中だといってことわらせたところ、客は腹を立てて帰って行った。その後、尚書がその人を訪ねて行くと、その人も沐浴中だといってことわらせた。そこで尚書はその家の壁にこう書いて帰った。
君謁我我沐浴
(君我を謁(たず)ぬとき我沐浴す)
我謁君君沐浴
(我君を謁ぬとき君沐浴す)
我浴於四月八
(我の沐浴するは四月八日)
君浴於六月六
(君の沐浴するは六月六日)
四月八日は浴仏(よくぶつ)(灌仏会(かんぶつえ))であり、六月六日は浴畜(よくちく)(家畜を川岸へつれて行って体を洗う日)である。