笑賛・笑府
ある秀才、寿命が尽きて冥土へ行き、閻魔大王に会ったところ、たまたま大王が屁を一発放(はな)った。すると秀才は即座に屁をたたえる文章を作って大王に献上した。
高く金臀(きんでん)を竦(そばだ)て、弘く宝気(ほうき)を宣(ひろ)む。依稀乎(いきこ)たり糸竹(しちく)の音に、彷彿乎(ほうふつこ)たり麝蘭(じやらん)の味に。臣下風(かふう)に立ち、馨香(けいこう)の至りに勝(た)えず。
閻魔大王は大いによろこび、寿命十年を増して人間世界へ帰らせた。
十年の期限が満ちて再び閻魔大王に会うことになったが、秀才は身も心も軽やかに森羅殿(しんらでん)さして上って行った。閻魔大王がそれを見て小鬼(しようき)にたずねた。
「あれは何者じゃ」
すると小鬼が答えていった。
「あの屁文章を作った秀才です」