笑賛・笑府
ある村の人が下男に、
「城内へ使いに行ってくれ」
というと、下男は用事もきかずにすぐ飛び出して城内へ行ってしまった。県庁の前まで行ったところ、ちょうど税金取立てのことで知事に呼び出された村長十人のうち一人がまだ来ていなかったので、村長たちはこの下男にたのんで身代りになってもらった。知事は村長たちの怠慢をとがめて、それぞれに笞(むち)打ち十回の罰を加えた。下男は村に帰り、主人から、
「おまえ、城内へ行って何をしてきたのだ」
ときかれ、知事に笞で打たれたことを話した。すると主人は笑って、
「ばか!」
といった。下男は解(げ)せぬ顔をして、
「あの九人の人たちもばかだったのかな」