韓非子(外儲説篇)
斉の景公が渤海(ぼつかい)に遊んだとき、都から早馬が駆けつけて、
「宰相の晏嬰(あんえい)さまが重態です。一刻も早くお帰りください」
といった。景公があわてて起(た)ち上ったところへ、また早馬が駆けつけてきて、
「間に合わないかもしれません」
と告げた。景公は、
「すみやかに煩且(はんしよ)(駿馬の名)に車をつけ、韓枢(かんすう)(名御者の名)に御(ぎよ)させよ」
といい、急がせて馬車に乗ったが、数百歩走ったところで、韓枢の御し方がもどかしくなり、手綱をひったくって自分で御した。しかし、また数百歩走ると、こんどは煩且の走り方がのろいといい、車を捨てて駈けだした。