世説新語(排調篇)
晋の王濛(おうもう)と劉〓(りゆうたん)は無二の親友で、二人とも蔡謨(さいぼ)を俗物として軽蔑していた。
あるとき二人は蔡謨を訪ね、しばらく話したのち、
「ところで、あなたは王衍(おうえん)とご自分とをくらべて、どう思われますか」
とたずねた。王衍は、竹林の七賢の一人王戒(おうじゆう)の従弟で、清談の大家といわれた人である。
「わたしは王衍には、とても及びません」
蔡謨はあっさりとそう答えた。
「どういう点で及ばないとおっしゃるのですか」
二人がさらにきくと、蔡謨はいった。
「王衍のところには、君たちのような客が来なかったという点でね」