明道雑志・笑府
宋の殿中丞(でんちゆうじよう)の丘浚(きゆうしゆん)が、高僧として名の知られた釈珊(しやくさん)に会ったところ、釈珊は傲然(ごうぜん)として、丘浚を見くだすような態度を示した。
そこへ州の将軍の息子が面会にきた。すると釈珊は態度を一変し、下にもおかないもてなしをしたので、丘浚はますます腹を立てた。そのとき、釈珊が丘浚にいった。
「もてなすのはもてなさぬことであり、もてなさぬのはもてなすことじゃ」
丘浚は我慢ができなくなり、立ちあがりざま杖でつづけさまに釈珊を打っていった。
「和尚、わるく思うなよ。打たぬのは打つことであり、打つのは打たぬことだからな」