笑苑千金
ある貧乏な夫婦、野菜をつくって暮しを立てていたが、人糞を買う金がない。そこで道端に便所を掘り、たまった人糞を肥料にしたところ、野菜の出来がよく、次第に暮しがらくになっていった。
それを知った男、自分も野菜づくりをして一儲(ひともう)けしようとたくらみ、なけなしの金をはたいて道端に便所を建てた。瓦で屋根をふいて白壁を塗った立派な便所である。ところが往来する人々はみなお宮かと思い、礼をして通りすぎて行く。
男は困って、往来へ出て人々に呼びかけた。
「これは便所です。どうぞ使ってください」
だが誰も使ってくれない。そこで、使ってくれそうな人をつかまえて、
「どうぞ糞をしてください」
とたのむと、その人は、
「おれは糞は出ないよ」
といった。男はいよいよ困って、さらにたのんだ。
「糞が出なければ、おならでも結構ですから」