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パラサイト・イブ09

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       8 移植の承諾をしてから二日後、聖美の心拍数が徐々に低下を始めた。 依然として聖美は人工呼吸器につながれて
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 移植の承諾をしてから二日後、聖美の心拍数が徐々に低下を始めた。
 依然として聖美は人工呼吸器につながれており、そのため少なくとも呼吸は規則的に繰り返されてはいた。しかしついに、そうして体の機能を維持し続けるのにも限界がきたというわけであった。モニタに映し出された聖美のバイタルサインを示す幾つかの数値が、確実に低くなってゆくのがわかった。
「今夜、市立中央病院の移植班がこちらへ来ることになりました」
 聖美の脳死判定に立ち会った医師が利明にそう告げた。
「聖美さんの心臓が停止したら即座に腎を摘出する必要があります。そのため、まえもって聖美さんの大腿動脈を確保しておかなければならないんです。今夜はそのための軽い手術をおこないます。心停止後すぐにそこからカニューレを入れて、聖美さんの腎を急速に冷却するためです」
 動脈の確保はすぐに終わった。利明がICUに戻ると、そこに横たわっている聖美の大腿にはカニューレ挿入用のマーキングが施されていた。
 昇圧剤の投与が打ち切られた。だが聖美の血圧はすぐには下降せず、一〇〇前後をいったりきたりしていた。明日の朝までは持ちそうだとの医師の言葉を聞いて、利明はぼんやりと、ああ、聖美の温もりもそれまでなのか、と思った。
 聖美の体が、刻々とドナーとしての物体に変わってゆく。そう感じながら利明はその日の夜を聖美と過ごした。夜の十時、いつもの看護婦が聖美の清拭にやってきた。聖美の出す尿や便の処理をおこない、口や鼻の穴の中に詰まったものを綿棒で取り出し、汗ばんだ背中をタオルで拭き、体の位置を変え褥瘡《じよくそう》ができないようにする。それを嫌な顔ひとつせず、むしろ利明に対して気遣いの笑みまで見せて、着実に進めてゆく。これまで利明は病気らしい病気をしたこともなく、病院とは無縁の生活を送ってきた。もちろん学会や懇親会で医者と話をすることはあったが、病院の中で医者がなにをしており、看護婦がなにをしているのか、実際のところはなにも知らなかったのだ。
「本当にありがとうございます」利明は素直に頭を下げた。「聖美もこんなに尽くしてもらって感謝していると思います」
 看護婦はそれを聞くとすこし手を止め、にっこりと微笑んでからいった。
「そういってくださると嬉しいです。でも、わたしたちとしては聖美さんを助けてあげられなくて本当にすまなく思っています」
「いや、とんでもない、みなさん十分に治療してくれましたよ」
 あわてて首を振る。すると看護婦は、浮かべた笑みを曖昧に崩し、そして利明から視線を離して作業を再開した。
「ICUで看護の仕事をしていると、ときどきわからなくなっちゃうことがあるんです」独り言のように小さな声でいう。「一生懸命看護しても、毎日のように亡くなられる患者さんが出てきますからね。わたしたちはいったいなにをやってるんだろうって、すごく落ち込むことがあるんです。ほかの部署と比ベて、ICU付きのナースは早くやめちゃうんですよ。でも」
 看護婦はそこで言葉を切った。聖美の清拭を終え、服を着せる。作業が終わったところで看護婦は利明のほうをくるりと向き、両手をぽんと腰においた。  '
「そうして励ましていただけると、これからもずっとがんばっていかなきゃ、って思います」
 そういって看護婦はICUを出ていった
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