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パラサイト・イブ2-15

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       15 麻理子の尿量が減少したとの看護婦の報告を受けて、吉住は麻理子の容体を窺いに病棟へ出向いた。 麻理子は
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 麻理子の尿量が減少したとの看護婦の報告を受けて、吉住は麻理子の容体を窺いに病棟へ出向いた。
 麻理子はわずかに体重増加傾向が見られており、さらに検査結果によれば血清クレアチニン値とBUN値が上がり気味になっていた。吉住は内心ひやりとしたものを覚えていた。
 拒絶反応かもしれない。
 そう思ったのだ。
 麻理子は病室のベッドで横になっていた。昨夜から微熱が出ている。顔がすこし火照っていた。吉住は手を挙げて挨拶したが、麻理子に無視されてしまった。病室にいた看護婦に苦笑をみせて吉住は麻理子の横に座った。
「すこし尿が出なくなってきたね。具合が悪いところはないかい」
「……わからない」麻理子はよそを向いたまま答えた。
 ここ数日、ようやく麻理子は吉住の質問に反応してくれるようになっていた。とはいってもぶっきらぼうに一言か二言話すだけだったが。しかしそれでも吉住にとっては嬉しかった。すこしは打ち解けてくれるようになったのだと解釈していた。やはり中庭の散歩を許可したのが大きかったのかもしれない。
 これまで麻理子の術後は理想的ともいえるほど順調だった。感染症も拒絶反応も起こらずここまできたのだ。今週からは免疫抑制剤のひとつである副腎ステロイド剤の量もさらに減らし、屋外へ出ることを許していた。外界の空気に触れても感染する可能性は低いと読んでいたのだ。このままいけばじきに退院となる予定だった。しかしここで拒絶反応が起こったとなると、退院は延期せざるを得なくなる。
 吉住は麻理子のわからないという答を軽く受け流した。これは隠しているのではない。本当にわからないのだろう。拒絶反応初期の自覚症状は曖昧になる。発熱や倦怠《けんたい》感が起こることが多いが、それは単に飲水量のコントロールがうまくいっていないことが原因である場合もあるので慎重に対処する必要がある。
「すこし検査をしたいんだ。拒絶反応が起こっている可能性がある。でも心配しなくていい。もし起こっていたとしてもすぐに治るよ」
 拒絶反応という言葉を吉住が出したとき、麻理子の体がぴくんと反応した。だが表情に変化はない。
「しばらく中庭に出るのはおあずけだ、いいね。超音波検査をしたいんだけどいいかな。前の移植のときにやったことがあるね」
「………」
「血液の流れる音を聞く検査だ。すぐに終わるし、ぜんぜん痛くない。その結果を見て判断する。まだ本当に拒絶が起こっているのかわからないんだ」
 麻理子は黙って頷き、承諾の合図をした。吉住はそれを見て傍らに立っている看護婦に超音波ドップラー血流計の準備をするよう伝えた。この機械で移植腎が肥大していないか、血流が低下していないかなどを検査することができる。病室で簡単に測定できるので吉住はこの検査を汎用《はんよう》していた。
 吉住は検査を看護婦に任せ、麻理子にもう一度笑顔を見せて退室した。病棟の長い廊下をエレベーターホールへと向かって歩く。窓から陽射しが射し込んで床に幾つもの四角い日だまりができている。
 麻理子の症状は本当に拒絶反応なのだろうか。歩きながら、吉住は目まぐるしく思考を回転させていた。まだ検査結果をみた限りでは特定しかねた。近年は優れた免疫抑制剤が開発されたために劇的な拒絶反応というものは起こりにくくなっている。そのかわりサイクロスポリン毒性との区別がつかなくなってきているのだ。
 サイクロスポリンは現在の移植治療には欠かせない免疫抑制剤だ。麻理子にも毎日投与している。だがサイクロスポリンは血中濃度が上がると腎毒性を示すという副作用がある。そこでこの市立中央病院では患者の血液を毎朝採取し、血中サイクロスポリンレベルをモニターすることになっていた。その結果を見ながら投与量を増減させ、副作用が起こらないように注意している。
 麻理子のモニタリング結果は毎日検査部から吉住のもとへ送られてくる。それを見る限りではサイクロスポリンレベルはさほど上昇しているとはいえなかった。ただし血清クレアチニンレベルが上がっているのが気になった。拒絶反応とも腎毒性ともとれる結果だ。だが吉住はこれまでの経験上、拒絶反応である可能性のほうが高いと感じていた。
 なぜいまごろ拒絶が起こったのだろう。それが吉住の偽らざる気持ちだった。いや、これまであまりにも順調だったのでそう思うのかもしれない。
 だが、吉住にはなにか引っ掛かるところがあった。
 麻理子は再移植だ。前回も拒絶反応で移植腎は廃絶している。そのことを吉住は思い出したのだった。
 あのとき、麻理子は免疫抑制剤を飲まなかった。飲んだと偽って捨てていた。麻理子は結局認めようとはしなかったが、吉住はそう確信していた。薬をちゃんと飲んでいれば再移植など受けることはなかったのに……。
 そこまで考えて、吉住はぎくりとして立ち止まった。
 まさか、今度も麻理子は薬を捨てたのではないか。
 移植を失敗させようと自分から拒絶を起こさせたのではないか。
 ……ばかな。
 吉住は頭を振った。血中モニタリングで免疫抑制剤の存在が確認されているのだ。麻理子は薬を飲んでいる。
 吉住は俯いたまま再び歩き始めた。すこしでも麻理子を疑った自分が恥ずかしかった。
 自分は知らないうちに麻理子に対する猜疑心《さいぎしん》を表情に出していたのかもしれない、と吉住は思つた。それを麻理子に悟られていたのではないか。だから麻理子はあんなにも敵愾心《てきがいしん》を表していたのではないか。
 麻理子が打ち解けてこなかったのはそのためだったのかもしれない。
 吉住は大きく息をつき、エレベーターのボタンを押した。
 超音波検査の結果はすぐに出て吉住に知らされた。やはり血流低下がわずかに認められる。吉住は麻理子の腎から針生検を取ることにした。予定の時間を看護婦に伝える。
 針生検は移植した腎の状態を観察するもつとも直接的な方法だ。患者の腎臓に針を刺し、組織をわずかに挟《えぐ》り取る。得られた組織の破片を染色して顕微鏡で観察するというものである。
 麻理子を手術室に入れてもらう。吉住はスクラップ・ルームで消毒をおこなった後、続いて手術室に入った。
 針生検は数分で終わり、吉住は組織を助手に渡した。
「すぐに検査部へ送ってくれ。光顕用と蛍光用と電顕用に三種類つくつてほしい。どのくらいであがるかな」
「光顕なら二〇分程度だといっていました」
「よし、すぐに見よう」
 手術室を出て、医局で待機していた吉住は、しかし心の内から湧き上がる不安を抑えることができなかった。
 今度も麻理子の腎は生着しないのではないか。
 前の移植のときと同じように廃絶し、結局は摘出しなくてはならなくなるのではないか。
 普段であれば考えもしないようなことが頭を過《よぎ》つた。これほど臆病になっているとは自分でも意外だった。
 麻理子は拒絶反応が起こってから病院へ運ばれてきた。家でひとり苦しんでいるところを、帰ってきた父親が見つけたのだった。吉住にとっては寝耳に水だった。麻理子は退院してからも薬を受け取るため定期的に通院していたし、確実に生着しているかどうか検査も受けていたのだ。麻理子はすぐにICUに入れられた。半信半疑のまま治療にあたった吉住は、麻理子の血液中の免疫抑制剤濃度があまりにも低いことに愕然とした。急激に起きた拒絶反応だった。拒絶治療では顕著な効果をあらわすはずのOKT-3を急いでワンショット静注したがすでに遅かった。麻理子は輸液を受け、透析を余儀なくされた。あっという問に移植した腎は不可逆的障害を受け、摘出を選択せざるを得なくなつた。
 移植腎の摘出手術ほど気の滅入るものはない。これまで多くのスタッフで何ヵ月もかけて大事に治療していたことがすべてふりだしに戻ってしまうのだ。いや、悪くすれば患者の生活の充実度が手術前より低下してしまう。そして普通、摘出手術は患者の血管の位置をよく把握しているという意味で移植の担当医がおこなうことになっている。摘出の準備を進める吉住に訪れるのは、自分の治療が敗北したような屈辱感に他ならなかった。
 摘出の日、外では小雨が降っていた。吉住は医局の窓からそれを見ながら、傘を持ってこなかったことを後悔した。だが灰色の空はなんとなく吉住の心を見透かしているようにも思えたのだ。
 摘出は移植したときと同じ手術室でおこなわれた。ただ移植のときと違うのは、すでに麻理子の右の下腹部に移植の傷痕が残っていることだった。吉住はその部位をもう一度電気メスで切開した。
 移植した腎がさほど周囲の組織に癒着していないことがせめてもの救いだつた。麻理子の場合移植してから六ヶ月が経っているとはいえ、徐々に拒絶が進行したわけではないので、ある意味で急性移植腎不全のような術層を示していた。慢性の拒絶の場合、炎症が起こって腹壁への癒着が強くなり、血管の位置が見えないため無理に剥離すると大出血する場合がある。麻理子の術部は血管も比較的楽に結紮《けつさつ》することができた。
 手術は終始重苦しい雰囲気だった。ナイロン糸で血管を吻合《ふんこう》するときも吉住は神経を集中できなかった。最も慎重におこなわなければならない手技であるとは十分承知していたが、こうして自分が麻理子から移植腎を摘出しているということにどうしても納得がいかなかったのだ……。
 時間どおりにあがってきた組織染色を見て、吉住は拒絶反応であることを確信した。拒絶の程度はまだ軽微ではあるが、毛細血管に多核白血球が目立ち、また細動脈に血栓が見られる。サイクロスポリン腎症の場合、細動脈に小さなガラスの粒のようなものが見られるのが特徴だが、麻理子の切片にはその細動脈硝子化の形態は観察されなかった。
 吉住は麻理子に治療薬としてメチルプレドニゾロンを処方することにした。麻理子の拒絶反応が重篤であればOKT-3を使うところだが今回はその必要はないと考えていた。三日間連続投与して様子を見る。効果があらわれるのは投与が終わってからだ。一週間は大事に様子を見る必要があった。
 吉住は指示を終え、ひとつ息をついてコーヒーを滝れた。自分のデスクに戻る。カップから白い湯気が立ちのぼるのを吉住はぼんやりと眺めた。
 摘出後、明らかに麻理子は変わった。
 極度の欝状態に陥った。移植腎が生着しなかった患者がまれに起こす精神状態だった。吉住は最初、移植が失敗したため麻理子がふさぎこんでいるのだと考えていた。だから麻理子や父親に再移植を勧め、希望を持ってもらおうと思った。透析もCAPDという新しい方法があることを教え、透析生活に戻る重圧を少しでも和らげようと配慮した。
 だが、今考えてみれば、麻理子のそのときの心理状態はもっと複雑だったのだ。
 あのとき吉住はなぜ麻理子が薬を飲まなかったのかということを最後まで追及しなかった。小児の場合、薬を故意に飲み忘れることがある。大人への反抗心からだったり、副作用により顔にむくみが出るのを嫌つたり、無断で外泊や旅行をしたりと、その理由はさまざまだ。そして体の調子がいいので薬を飲まなくても大丈夫だと自分で決めてしまう。調子がいいのは薬のおかげだということを忘れてしまうのだ。
 正直なところ、吉住には子供の気持ちがよく理解できなかった。どう接していいのかわからないのだった。自分に子供がいないせいかもしれない、と吉住は思った。
 医局に務めるようになってすぐ、吉住は大学の同級生だった女性と結婚した。ふたりとも大学病院で働いていたため子供を育てる時間がなかった。結婚して年月が過ぎ、そしてようやくふたりに余裕ができたとき、吉住の精子が異常で女性を妊娠させることはできないということがわかったのだ。
 あれだけ仕事をしたいと主張し、子供はあとにしようとことあるごとに強い口調で吉住を説得していた妻は、その結果を聞くなり吉住から顔を背けた。
 だが吉住はそのとき、妻が一瞬見せた蔑《さげす》むような視線を見逃さなかった。
 もっとちゃんと麻理子の精神管理をするベきだったのではないか。いまさらながら吉住は悔やんだ。もっと麻理子と話すベきだった。
 麻理子はしばらくして鬱状態から脱出したようにみえた。吉住や父親のいうこともよく聞き、再移植の登録にも同意した。吉住は麻理子が摘出のショックから立ち直つたものと思っていた。
 だがそうではなかつたのだ。
 今回移植を受けた麻理子を見てわかつた。麻理子はまだ立ち直っていないのだ。二年前、麻理子は廃絶のために鬱になったわけではなかった。なにか吉住たちの知らない別のことを気に病んでいたのだ。それを麻理子は誰にも話さずひとりで隠していた。そして立ち直った演技をして大人たちを欺《あざむ》いていた。それを吉住たちは見抜くことができなかったのだ。
 もう遅いだろうか。
 もう麻理子の気持ちを掴むことはできないだろうか。
 そんなことはないはずだ、そう吉住は思った。
 信頼を受けられない移植医ならやめてしまったほうがいい。
 もっと麻理子と話したかった。
 
 その日の夕方、吉住は麻理子の病室へ出向いた。
 部屋では麻理子がひとり、ぽつんとベッドに横たわり天井を眺めていた。点滴チューブが麻理子の腕につながっている。拒絶反応の治療として吉住が処方した薬剤だ。
 麻理子は突然吉住が来たことにすこし驚いたようだつた。無理もない。これまで吉住は急用の場合を除いて決まった時間にしか回診に現れなかつたのだ。
「どうしたんだい、外へ出られなくなって少しがっかりしたのかい」
 吉住はそう話しかけた。
 麻理子は答えずに顔を背けてしまった。だが吉住はかまわずに麻理子のベッドサイドにある椅子に腰掛けた。
「拒絶反応はまだ軽い状態だったよ」吉住は話を続けた。「今度写真を見せてあげよう。自分の腎臓の写真を見たことがないだろう。治療用の薬を飲めばぜったいに治る。心配しなくていい」
「………」
「大丈夫だ。前の移植のときもそうだっただろう。すこしの拒絶反応ならすぐにおさまるんだ。きっと治してやる。すぐにおいしいものを家で食べられるようになる」
「………」
「ところで……」
 声住はそこで言葉を切った。少しのあいだ躊躇《ちゆうちよ》したが、思い切って尋ねることにした。
「前の移植のとき、何があったのか教えてくれないか」
 むこうを向いていた麻理子の肩がすこし動くのがわかった。吉住はさらに続けた。
「前の移植のときは先生のほうもちゃんと悩みを聞いてやらなかった……。悪かったと思っている。……薬を飲まなかったのはなにか理由があったんだね」
「………」
「それを話してくれないか」
 麻理子は黙っていた。だが明らかに心が揺れ動いているのがわかった。
 しばらく吉住は、なにもしゃべらずに麻理子が話し出すのを待っていた。部屋の中に沈黙が降りた。吉住にはそれが雪のように天井からゆっくりと舞い降りてきて、麻理子のベッドのシーツに降り積もるような錯覚を覚えた。
「先生、あたし眠いんです……」
 ようやく麻理子がそれだけいった。
「そうか……」
 吉住は立ち上がった。すこしは脈がある、と思った。すくなくとも手術直後のときより、麻理子はわずかではあるがコミュニケーションをしようとしている。
「拒絶のことは心配しないで。きつと治してやる」
 そういって吉住は病室を出た。
 翌日の夜、吉住は生検の結果をもう一度見直していた。凍結切片による電子顕微鏡観察の結果も出たため、光顕の結果と見比べていたのだ。
「ちょっと奇妙なんですよ」
 検査部で組織標本を担当する技師が吉住にいった。
 看護婦が検査部から持ってきた写真に技師のコメントがついていたため吉住は電話で問い合わせたのだった。
「拒絶反応としては軽度のもので、さほど問題はないんです。しかしちょっと気になりまして」技師はそこで言葉を濁すように声を落とした。「こんなのはこれまで見たことがなかったので」
 吉住はすでに技師のいわんとしていることがわかっていた。写真を見てすぐに普段とは違う形態だということに気づいたのだ。
「固定法はいつもと同じなんでしょう。これまでにこういうのは本当になかったんですね?」
 吉住は念をおした。組織の固定法を誤ると本来とは異なる結果を示してしまう場合が多い。吉住も最初は染色手技の間違いではないかと思った。
 だがミスではないことがわかると、今度はどう説明したらいいのか吉住にはまるでわからなくなった。
 吉住は移植手術後一時間で採取した生検の結果をファイルから取り出し、もう一度よく観察してみた。吉住は息を呑んだ。このときすでに兆候が現れている。気がつかなかったのは迂闊《うかつ》だった。
 移植腎の細胞の中にあるミトコンドリアが異常に大ぎいのだ。
 通常の数倍の長さがある。しかも小胞体のように網目状に融合し、細胞全体に広がっている。
 これまで見たこともないような形態だった。
 吉住は気味が悪くなって写真を机の上に放った。コーヒーを一気に飲み干す。だがまともな説明を思いつかなかった。
 確かにサイクロスポリンを投与したときにミトコンドリアが伸長することは知られている。経口利尿薬であるエタクリン酸は腎の細胞のミトコンドリアに形状変化をもたらすことも吉住は人から聞いて知っていた。だがいくらサイクロスポリンを投与しているとはいえ、これは異常だった。しかもそれは手術直後の細胞でも観察されている。サイクロスポリンの投与で変化が誘導されたとしても、最初から移植腎の細胞はミトコンドリアに何らかの異常があったとしか考えられない。
 これがなにを意味するのか、吉住にはわからなかった。やはりサイクロスポリンの腎毒性が出ている証拠なのか。それともまったく別の理由があるのか。腎が最初から異常だったとしても、なぜこれまでは順調に…機能していたのか。
 不意に、吉住は移植手術のときに感じた異様な熱さを思い出した。
 移植腎に触れたときに感じたあの熱さだった。あのとき吉住の心臓は奇妙なほどの興奮状態にあった。そう、まるで腎が吉住の心臓を動かしているようにも思えたのだ。
 あのときのことと関係があるのだろうか。
 吉住は鳥肌が立つのを感じた。これを麻理子に知らせるわけにはいかない。だがどうして対処したらいいのか見当もつかなかった。このまま何事もなく過ぎればいい、そう思った。このミトコンドリアは拒絶とは関係ないのかもしれない。腎も今度の拒絶以外はまったく問題なく機能してきた。このまま無事に生着してほしい。
 机の上の電顕写真を見つめながらそう願った。
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