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パラサイト・イブ2-14

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:      14 大丈夫ですか?六月のあの日、聖美が気を取り戻したとき、利明は即座にそう声をかけてきた。 聖美はソファに
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 大丈夫ですか?……六月のあの日、聖美が気を取り戻したとき、利明は即座にそう声をかけてきた。
 聖美はソファに寝かされていた。壁には黒板がかけられており、反対側の壁は大きな本棚で覆われ、英語で題名が書かれたハード力バーがずらりと並べられていた。大学の中のどこかの部屋らしい。だが実験器具や実験台がないところを見ると、誰か職員の個室なのかもしれなかった。
 聖美はひとつ頭を振ってから上半身を起こした。そして自分が心臓の発作で倒れたことを思い出し、あわてて胸に手をやった。しばらくそのままで鼓動を確かめる。いつもと同じ、静かで規則的な動きが伝わってきた。ほっとして聖美は姿勢を整え、ソファに腰掛けた。すぐそばに男の人が立っており、聖美の顔色を心配そうに窺《うかが》っていた。
「本当に大丈夫ですか?」
 その人はもう一度訊いてきた。
「はい、あの……大丈夫です。本当にすみませんでした」聖美はぴょこぴょこと頭を下げた。
「まあ、少しゆっくりしていったらいいですよ」その人は軽く頭を掻いた。「ここはうちの講座のゼミ室なんです。日曜だから誰も来ないですからね。水かなにか持ってきますか?」
「……すみません、じゃあ、一杯だけ」
「えええ、いいですよ。ちょっと待っててください」
 聖美の気を落ち着かせようとその人は優しく笑みを見せ、そして部屋を出ていった。
 急に沈黙が部屋の中を覆った。聖美は俯《うつむ》いてふうと小さく息をついた。そして襟元《えりもと》が少しよじれていることに気づいてあたふたと直した。
 たったいま出ていった男の人の顔が聖美の目に浮かんだ。
 あの講義室で、スライドプロジェクターが動き出す直前、自分の座っている席の後ろに見えた顔だった。心臓がおかしくなり、気を失う寸前に見えた顔だった。
 そうだ。聖美は思い出した。あの人に自分は倒れ込んでしまったのだ。頬が火照るのがわかった。
 あのとき自分はスクリーンに映し出された英語の文字を考えていた。なんという文字だったろう、聖美は記憶を辿《たど》った。たしか人の名前だった。聖美は目を閉じ、その文字を瞼の裏に呼び戻そうとした。Naga……? そう、ナガシマ、そんな名前だったような気がする。
 はっとして、聖美は目を開き顔を上げた。なんてばかなんだろう、そう思った。今の男の人が永島利明という人だったということに、ようやく気づいたのだ。我ながら情けなかった。
 その男の人がマグカップを持って入ってきた。
「どうぞ」
 と笑って手渡してくれる。こくりとお辞儀をして口をつけた。冷たいウーロン茶が喉を心地よく滑り落ちていった。
「あの……ありがとうございました。永島……さんですよね? 違っていたらごめんなさい」
 一瞬、利明はえっと声を上げ、聖美の顔を見つめた。なぜ名前を知っているのだろうと問いかけてきているのがわかった。
「二年前、一度お会いしましたよね」聖美は努めて明るい笑みをつくった。「吹奏楽部の新歓コンパで。覚えていらっしゃらないかもしれないけれど、わたし、そのときの新入生だったんです。片岡聖美といいます」
 利明はきょとんとし、それから顔をほころばせた。
「あ、ああ……、そうか、そうだったんですか」
 結局、聖美はそれから三〇分近く利明と話をした。利明は聖美のことを覚えていなかったが、吹奏楽部の後輩ということもあったのか、気さくに話をしてくれた。大学院に進学してからは吹奏楽部のほうへ顔を出していないので、聖美の顔を覚えることができなかったのだと詫びた。二年前も落ち着いた感じの人だと思ったが、こうして久しぶりに対面してみてその印象がさらに強くなっていた。当時修士一年だといっていたから、すでに卒業していておかしくないはずであった。そこでさりげなくそのことを聞いてみると、博士課程に進んだからねと利明は答えた。聖美は素直に尊敬の声をあげた。自分とは違って目的意識を持っているんだな、と思った。利明は研究がおもしろくてやめられないのだといって笑った。そんな利明の笑顔を、聖美は素敵だと感じた。
 石原教授が帰ってこなかったら、聖美はもっと話していただろう。講演が終わって戻ってきた石原教授は、聖美を認めるなり大袈裟に声をかけてきた。
「きみ、大丈夫だったかい。いやあ、突然だったんで驚いたよ」
 聖美は迷惑をかけたことを詫び、ひたすら頭を下げた。教授はいままでにも発作を起こしたことがあるのかとか、医者に診てもらったほうがいいのではないかとか、いろいろ細かく話しかけてきてくれた。聖美はそれらにひとつひとつ答え、本当に大丈夫ですと相手を納得させるのに随分時間がかかった。
「永島君、この人を送っていってやりなさい。帰る途中でまた具合が悪くなると困る」
 利明の車の助手席に座っているあいだ、聖美は何度も礼を繰り返しいった。
「そんなに恐縮されると、こっちの方が困るよ」
 そういって利明は困惑した笑みを浮かべた。そこで聖美は反射的にまたごめんなさいと謝ってしまった。利明が吹き出し、笑った。つられて聖美も笑ってしまった。
 次の日曜日、ふたりで昼食を共にした。そのあと軽くドライブをした。お互いの電話番号を教え合った。
 その翌日、聖美のほうから電話をかけた。次の日の夜遅く、今度は利明のほうから電話がかかってきた。
 そうしてふたりの付き合いがはじまった。
 利明は大学の実験が忙しく、日曜日であってもずっと聖美と一緒にいてくれるわけではなかった。なんでも細胞や動物を扱っている都合上、どうしてもまるまる一日休むことはできないのだという。しかしなんとか時間をやりくりして聖美をドライブにつれていってくれたり、飲みに誘ったりしてくれた。実験が入り、夜しか暇がないときは映画のビデオを借りてふたりで観た。忙しいにもかかわらず聖美のことを考えてくれる利明が、ますます好きになっていった。
 少しでも多く利明のことが知りたい、聖美はそう思った。聖美は利明のおこなっている研究の内容がわからなかったので、話題が途切れたときはよくその質問をした。利明は嬉しそうな顔をして、熱心に、しかしわかりやすく聖美に教えてくれた。研究のことを話している利明の瞳はいつも生き生きとしていた。そんな利明の顔を横から眺めながら、ああ、本当に研究が好きなんだな、と思った。自分の好きな人が何かに情熱を傾けているところは、とても素晴らしいと思った。
「あのとき教授が講演で使ったスライドは、ぼくが出したデータだったんだよ」
 講演会のスライドに利明の名が入っていた理由を訊くと、利明はそういって説明を始めた。
「修士のときにいい結果が出てね、それで教授に論文を書いてみろっていわれたんだ。ぼくが博士課程に進学することがわかっていたからそう指導したんだろうね。英語で書かなくちゃならないから大変だったけど、結局いい雑誌に載ったんだよ。『ジャーナル・オヴ・バイオロジカル・ケミストリー』っていう雑誌だ」
「有名な雑誌なの?」
「ああ、一流だよ。生化学関係の論文を載せる雑誌で、世界中の人が読むんだ。聖美がスライドで見たのは、その雑誌に論文が載ったっていうことを示す記号だったんだよ。ええと、聖美は知ってるかな、学術雑誌には大きく分けて二種類あって、論文を載せるものと、解説記事や総説を載せるものがあるんだ。日本で出ているニュートンや日経サイエンスなんていう雑誌は、聖美も見たことがあるだろう?」
「ええ」
「ああいうのは記事や総説が載っている雑誌で、本当の意味の学術雑誌とはいわないんだ。一般の人向けの啓蒙雑誌だね。そういったもののほかに、研究者が自分で発見したことをレポートする舞台としてページが用意されている雑誌がある。こういった雑誌に、世界中の研究者は自分の研究結果を論文として投稿するんだ。普通は英語で書かないといけない。雑誌には何人かの審査員がついている。有名な大学の教授がほとんどだけどね。審査員がぼくらの論文を読んで、これは世間に発表する価値があると判断した場合は雑誌に載る。だめなら突き返されたり書き直せといってきたりする」
「利明さんのはどうだったの?」
「ひとつ足りない実験をして、その結果を付け加えるならいいという話だった。だからその実験をやった。ちゃんと掲載してくれたよ。ほら、これがその別刷り」
 利明が手渡してくれたその冊子は、全面細かい英語の活字と図表で埋められていた。表題には英文科である聖美でも知らない専門用語や略号が使われていた。ぱらぱらと見た限りでは内容は濃く、適当に読み飛ばすことはできそうになかった。これだけのものを作り上げた利明に、聖美は心から称賛を送った。
「でも、まだ論文を書かないといけないんでしょ?」
「ああ、博士課程を卒業するのに、英語の論文を三報出すことが必要だからね。ただ、講座の先生がぼくの名前を入れてひとつ論文を出したんだ。だからあとひとつでもいいんだけれどね」
「今度もこの雑誌に出すの?」
「うーん、そう何度もそんな一流の雑誌には投稿できないよ。まあ、いつかはもっと上のランクのところに出したいとは思っているけどね」
「上のランク?」
「学術雑誌にもランクがあってね、超一流雑誌から、それこそ掲載されてもほとんどインパクトがないものまで、いろいろあるんだよ。投稿するほうは、自分の研究のレベルを考えてどの雑誌にしようかと決めるんだ。それに雑誌にも性格がある。科学全般を扱うものから、本当に小さな領域だけを専門にしているものもある。自分の研究との相性も考えないとね。そうだな、世界で一番権威があるのが、イギリスで発行されている『ネイチャー』とアメリ力の『サイエンス』かな。このふたつに論文が載ったら大変なことだよ。その次にくるのが、生化学の分野だったら『セル』で、その下にこの『ジャーナル・オヴ・バイオロジ力ル・ケミストリー』あたりがくるかな」
「じゃあ、この論文、すごいんじゃないの!」
「もちろん、ぼくだけの力でできたわけじゃないんだよ。たまたま教授が与えてくれたテーマが良かったことが大きいんだけど。それに教授の知り合いが雑誌の審査員をやっていたから少しは考慮してくれたのかもしれないし……」
 自慢したいのに妙に弱気になってしまうのも、利明の性格の良さからくるところだった。そんなときに見せる利明の照れたような笑みも聖美は好きだった。
 何度目かの口づけのとき、利明は舌を入れてぎた。頭の中が熱くなるほどの心地よさだった。胸の鼓動が早まるのがわかった。利明の手が服の上から軽く聖美の胸に触れてきた。どうしよう、こんなに興奮していることが知られてしまう、そう思いながらも聖美は目を閉じ、積極的に舌を出し利明に応えた。いままでに感じたことがないほどの悦びだった。この人だ、聖美はそう思った。この人をわたしは待っ
[#地付き]テイタノダ)
 はっとして聖美は唇を離した。
「どうした?」利明が不審に思ったのか尋ねてきた。
「……誰かの声が聞こえたような気がして」
「声?」
(コノヒトヲワタシハマッテイタノダ)
「ほら!」
 聖美は悲鳴をあげた。
 錯乱《さくらん》しかけた聖美を利明は抱き締めてなだめ、声など聞こえないと何度もいって落ち着かせてくれた。
 確かに、その声はもうどこかへいってしまっていた。聖美は利明の腕の中で震えながら耳をすましたが、もう何も聞こえなかった。
「空耳だよ」
 聖美の頭をさすりながら、利明はそういった。だが聖美にはそうは思えなかった。空耳などではなかった。そう、あのとき聞いた声と同じだった。講演会のとき、失心する寸前に聞いた、あの声だった。高く鋭い、しかし男性なのか女性なのか判別できない、どこから聞こえてくるのかわからないあの声だった。
 大丈夫だよ、そういって利明は聖美の額に軽く口づけをしてくれた。動悸《どうき》はおさまりつつあったが、しかしまだ聖美は震えていた。
「なにをぼんやりしてるんだい?」
 利明の声に、聖美は我に返った。イタリア料理が並ぶテーブルの向こうに、利明が座っていた。
「なんでもないの」聖美は笑みを浮かべてその場を取り繕った。
 その日、初めて聖美は利明と朝まで一緒に過ごした。聖美は初めから緊張してしまったが、終始利明は優しく接してくれた。聖美は恥ずかしさのあまり体中から火が出たように熱くなった。心臓の動きに胸がついていけなかった。しかしそのとき利明がひとこと、きれいだよと耳元でいってくれた。
 それが、とても嬉しかった。
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