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パラサイト・イブ3-7

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       7 頭の中が深紅に染まった。 なにも見えなくなった。逃れようともがいたが手を押さえられた。息ができない。血
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 頭の中が深紅に染まった。
 なにも見えなくなった。逃れようともがいたが手を押さえられた。息ができない。血液が頭上へと逆流してゆく。熱い。燃えるように熱い。
 聖美の舌が侵入してきた。凄《すさ》まじい力だった。歯を食いしばり阻止《そし》しようとした。だがあっけなくこじ開けられた。蛞蝓《なめくじ》のような舌が利明の口腔へ入ってくる。どろりとした粘液が口の中へ流れ込んでくる。それは塩の味がした。そして直後に腐敗したような甘味が利明の舌にへばりついてきた。培地だ、と利明は思った。培地の味だ。聖美はその肉体に培地を保存することによって乾燥を防いでいるのだ。
 聖美の舌が侵攻をはじめた。利明の口の中で蠢き、嘗めあげる。利明の歯茎の裏を、奥歯を、喉元を這いずりまわる。利明の舌に絡みつく。
 聖美が利明の右手を捕らえた。自らのほうへ引き寄せる。
「触って」
 舌で責めながら聖美が発情した声でいった。利明は拳を握りそれを拒んだ。だが聖美の指がぎりぎりと利明の手首を締め上げてくる。たまらず利明は手を開いた。
 聖美は利明の手を自分の胸へ圧し当てた。すでに聖美の乳首は鋭く勃《た》ち上がり硬直していた。聖美はもっととでもいうように強く手首をつかんでくる。
 聖美のもう一方の手が利明のネクタイを外しはじめた。シャツのボタンをむしり取ってゆく。まだ利明の口は聖美によって塞がれていた。息が詰まり、顔が破裂しそうだった。だが聖美の舌は利明の舌を取り押さえ離そうとしない。
 利明の右手が下へと導かれてゆく。胸から臍へ、そしてじめじめとした茂みへと誘《いざな》われる。利明は抵抗した。だが聖美は利明の手首を鋼《はがね》のような筋肉で握り締めてくる。聖美の下腹部は大きくうねっていた。その部分からどろどろとした汚泥がとめどなく溢れ、それが聖美の表面へと広がってゆく。下腹部全体がひとつの大きな釜のように沸き立っている。どこからが粘液でどこからが肉なのか利明にはわからなかった。ただ火傷《やけど》しそうに熱かった。灼熱《しやくねつ》だった。
 利明の体が押し倒された。実験台の上に背中が圧しつけられる。聖美はその上にのしかかってきた。足を蹴りあげるが無駄だった。起き上がることができなかった。何かががらがらと大きな音を立てて床へ落ちる。すでにシャツは引き裂かれていた。聖美はもどかしそうにベルトへと手をかけている。
 聖美の唇が離れた。利明は激しく咳《せ》き込んだ。唇の端から聖美が流し込んできた培地が流れてゆく。粘液が利明と聖美の唇の間に糸を引いた。
「やめ……て……くれ……」
 やっとのことで利明は声を出した。完全に聖美は利明の上に馬乗りになっていた。聖美の部分からおびただしい粘液が流れ利明の体を濡らしていた。霞んだ視界の向こうに聖美のその部分が見えた。それはいまにも利明に襲いかかろうと膨れ上がり大きく開いていた。液体を吐き出しながら収縮を繰り返している。
「このときを待ってたわ」
 聖美が切迫したように喘《あえ》いだ。
「十億年以上も待っていたわ。……さあ、私の中に入って。思い切り突き上げて。私の中をかき回して。十億年分の愛を放って!」
 一気にズボンと下着がずりおろされた。聖美はその上にまたがってきた。そしてその肉で利明の下半身を覆った。聖美の腰がどろりと不定形に変わり、利明の体を包みこんだ。
 坩堝《るつぼ》の中に入ったようだった。利明は叫んだ。腰から下が溶けてゆく。聖美の体に消化されてゆく。巨大な胃の中に呑まれたようだった。身動きがとれなかった。
「さあ、どうしたの、利明。いつものようになってくれないの?」
 聖美が不満げに鼻を鳴らした。利明のものが縮んだままなのに業を煮やしたのか、自ら腰を振ってきた。聖美の体内の肉がぞろりと動いた。利明のものへと襞《ひだ》が集まってくる。熱湯のような細胞の渦が利明の中心を捕らえた。利明のものを銜《くわ》え、絞るようにして上へと持ち上げてゆく。聖美は自らの肉の運動で強制的に利明を自分の膣へと導こうとした。
「利明、あなたに抱かれたときのことをいつも思い出していたのよ」
 聖美が再び顔を近づけてきた。利明は顔を背けた。
「あなたと何回したか、どんな格好でしたか、あなたは何回衝《つ》いてきたか、みんな覚えてる。あなたが私のどこに触れてどこを嘗めたかもおぼえている。あなたを愛しているからよ」
 聞きたくなかった。おとなしく晩生《おくて》だった聖美が、いま吐き気のするような卑狸《ひわい》な言葉を発している。利明は耐えられなかった。
 聖美は利明の耳や首筋に舌を這わせ、利明がどのようにして聖美を抱いたかをねっとりとした口調で話しはじめた。聖美は自分の言葉に感じていた。しゃべりながら体を震わせよがり声をあげた。そして下半身を波打たせ利明のものをしっかりと肉の襞で吸い込んでいた。
「あなたは私だけのもの……。誰にもわたさない。あなたの放つものが欲しい」
 聖美の肉が利明に強烈な刺激を与えてきた。聖美は体内で無数の触手を出し利明に絡み付き、激しく腰を動かした。穴は蠕動し、螺旋《らせん》を巻き、収縮し、利明を絞り上げる。いつの間にか聖美は上半身もどろどろに溶解していた。あたりに聖美の肉片が飛び散ってゆく。利明を両手で抱きかかえる格好でそのまま覆いかぶさってきた。肉のうねりが利明の全身を包んだ。
「……さあ、利明、私を愛して」
 熔岩《ようがん》の中に呑まれたようだった。利明にはどこが自分の体でどこが聖美なのかわからなくなっていた。衣服を着ているのかどうかも定かでなかった。それどころか、自分の手がどこにあるのか、自分の足がどこにあるのか、目や鼻や口がどこにあるのか認識できなかった。ただ自分の中心だけが溶けそうなほど熱かった。
 聖美の肉が動きはじめた。海のように満ちては引く。打ち寄せ、飛沫を上げ、音を立てて引き返す。利明は翻弄された。
 体中の細胞がばらばらになり聖美の細胞と渦を巻いて交じりあうようだった。聖美の細胞が利明の細胞に付着し、そして融合してくる。脂質膜が融合し、ふたりの細胞質が混合する。聖美のなかのミトコンドリアが利明のなかに入り込んでくる。聖美のミトコンドリアが利明のミトコンドリアと接触する。外膜が接合し、そして内膜が接合する。聖美のミトコンドリアマトリックスが利明のマトリックスと絡み合う。聖美のミトコンドリアDNAが利明のそれと縺《もつ》れる。ふたりのDNAが螺旋を巻き、融合したミトコンドリアの中をぐるぐると泳ぎ回る。迷宮のようなマトリックスの谷間を縫うようにしてふたりのDNAが暴走する。情報伝達因子が狂ったように活性化し、稲妻のごとくシグナルを発する。膜電位が上昇する。二荷イオンが奔流のように流れ込んでくる。利明の細胞が震える。ミトコンドリアが震える。脂質が、糖が、タンパクが震える。核ゲノムが感じている。コドンが、ヌクレオチドが、塩基が感じている。炭素がぶるぶると振動し聖美の愛撫《あいぶ》に感じている。
 利明は絶叫した。ゲノムの中心から何かが絞り出されてゆく。だめだ、いってはだめだ、そう叫んでも止まらない。利明のすベてが吸い取られてゆく。それは上へ、はるか上方へ、聖美の中へ、熱い塊となって飛んでゆく。何度も何度も発射される。聖美が嵐《あらし》のように痙攣する。利明の意識が溶けてゆく。
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