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パラサイト・イブ3-11

时间: 2019-07-27    进入日语论坛
核心提示:       11 安斉重徳はひとけのない病院の玄関ロビーで、ひとりソファに座っていた。 照明は消されている。いつもは患
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 安斉重徳はひとけのない病院の玄関ロビーで、ひとりソファに座っていた。
 照明は消されている。いつもは患者でこったがえしているはずの窓口にはベージュのカーテンがひかれており安斉を拒絶しているようだった。きちんと整列された黒いソファも、人のいない今はむしろ滑稽《こつけい》にさえ見える。壁にかけられた大きな時計が、音を立てて秒を刻んでいた。昼間は喧喋《けんそう》に包まれ誰も耳にすることはないのだろう。しかし今はそれが気になってしかたがなかった。
 ただひとつ、時間外の薬剤交付窓口だけが黄色い明かりを灯している。だがその窓口でさえカーテンが降り、中を窺うことはできない。人の動いている気配はするが、何をしているのか安斉にはわからなかった。
 ここへ座ってから三〇分以上が過ぎている。安斉は壁の時計を見上げた。
 麻理子の顔が目に浮かんできた。麻理子はなにかに脅えていた。それがなんなのか、麻理子は話そうとはしない。まだ完全に心を開いてくれようとはしなかった。だが時折り安斉に助けを求めるような視線を送ってきた。安斉はその瞳から麻理子がなにを考えているのか読み取ろうとした。しかし、安斉が見つめ返すと、ついと顔を横に向けてしまう。麻理子自身、どうしたらいいのかわからずに揺れ動いているようだった。
 面会時間が終わり、安斉が立ち上がったとき、麻理子は上半身を起こして安斉を見つめてきた。その目は行かないでと訴えていた。こわい、と昨夜麻理子がいった言葉を思い出した。
 安斉は麻理子の手を握ってやった。麻理子は強く握り返してきた。安斉が力を抜いてもしばらく麻理子はその手を握り締めたままだった。安斉はその手をじっと見ていた。
 そろそろ行かないといけない、安斉はそういって麻理子の手を放した。
 安斉が病室の外に出てドアを閉めるまで、麻理子の視線を感じた。ドアを閉めるとき、悲鳴にも近い感情が伝わってきた。
 しかたがないんだ、面会時間は終わりなのだから。そのとき安斉はそう言い聞かせていた。分別のある大人を演じていた。
 エレベーターホールへと向かって廊下を歩き出したとき、すぐに自分が間違っていたことに気づいた。面会時間など問題ではない。麻理子のそばにいるべきではないのか。自分は麻理子を理解しようと努力している、しかしそれもまだポーズだけではないのか。麻理子はそれを見破っているから、完全に打ち解けてこようとしないのではないか。安斉は踵をかえそうとした。だがが足は意に反してそのまま歩き続けた。麻理子の病室がどんどん遠くなってゆく。
 病室へ戻る力はない。しかし家へ帰ることはできない。安斉はこのロビーで曖昧な自分の感情を落ち着かせようとしていた。これからどうするつもりなのか自分でもわからなかった。この場所から動くことができなくなっていた。
「あんた、そこで何やってるんです」
 突然声をかけられて安斉はびくりとした。
 年配の看護婦が立っていた。買い物籠《かご》のようなものを手に提げ睨《にら》んでいる。薬を取りに来たらしい。白衣を着ていなければ八百屋かスーパーにいるのが似つかわしい感じだった。
 安斉が口ごもっていると、その看護婦はつかつかと歩み寄って来た。
「もう面会時間は終わってるんですよ。どうしてこんなところに座ってるんです」
「いや……」
「もう少ししたら警備員が回ってくるよ。はやく出たほうがいいんじゃないの」
「………」
 のろのろと安斉は立ち上がった。正面玄関は閉まっている。時間外通用口から出るしかなかった。
「さあ、ぐずぐずしてないでちょうだいよ」
 安斉の背中に看護婦がか声を浴びせてくる。
 安斉は廊下を歩いていった。麻理子のことが気にかかったが仕方がなかった。もっとも、あのままずっと座っているわけにはいかなかったのだ。帰るきっかけができて良かったのかもしれなかった。
 時間外通用口は正面玄関と随分印象が違っている。植木の整ったロータリーもなければタクシー乗り場もない。照明もなく、数十メートル先はほとんど見通すことができなかった。直進方向は行き止まりなのかもしれない。光が届くところでさえ、病棟の壁が横に迫《せ》り出しており狭苦しい感じがした。自転車や小型自動車が何台か停まっている。壁を伝わる排水口から、ちろちろと水が流れ出ていた。
 どちらへ行けば駐車場に出られるのだろう。安斉はすこし歩いてあたりを見回した。
 そのときだった。
 不意に、足元から低い音が聞こえてきた。驚いて下を見ると、安斉はマンホールの上に立っていた。かすかな振動が足に伝わってくる。それは次第に大きくなってきていた。
 下水の流れる音だろうか。安斉は初めそう思った。だがそれにしては音が不自然だった。なにかが下水道の中で動いている、そんな感じだった。鼠《ねずみ》か。いや、もっと大きなものだ。
 それが近づいてくるのがわかった。音が大きくなってくる。マンホールの蓋《ふた》がそれに共鳴してかたかたと鳴りはじめた。安斉はあわてて飛びのいた。
 あたりに耳をすます。どこからそれがやってくるのか、音がどちらから迫ってきているのか、安斉はそれを見極めようと神経を集中させた。下水道の壁を何かが転がっている、そうでなければ何かが這っている、そんな音だった。足音は聞こえなかった。断続的な音ではない。それが生き物なのか機械なのかもわからなかったが、とにかくこちらへかなりのスピードで進んでいる。マンホールの蓋はすでに見てわかるほど大きく振動している。安斉は顔を上げた。ちょうど正面の方向だった。真正面からその音は近づいてくる。安斉は目の前にあるマンホールに目を落とし、そして息を呑んで後ろを振り返った。そこには時間外通用口の扉があった。音がやってくる方向、マンホール、通用口、それらが一直線に並んでいる。
 なんだこれは?
 病院へ向かってきているのか?
 安斉は再び音の方向に顔を向けた。病棟の窓明かりも届かず深い闇《やみ》が見えるだけだ。近くにあるはずの民家や電信柱の影もわからない。
 マンホールがスピーカーとなり、その音が地鳴りのように響きはじめた。風が吹いているのか蓋の縁から空気の漏れる音がする。地下を這い進むそのものの気配が、はっきりとわかるようになってきた。大きかった。安斉が想像していたよりもはるかに大きかった。鼠や蛇などという代物《しろもの》ではない。安斉以上の大きさかもしれない。それがずるずると進んでくる。そのものの息遣いさえ聞こえてきた。その動きは自信に溢れている。決して迷ってはいない。音でそれがわかる。まっすぐにこちらへ向かっている。
 安斉の体は小刻みに震えていた。正面の闇を注視する。地面の震動が波のように迫ってくるのが見える。二〇メートル。闇が音を立てている。一五メートル。アスファルトが微動している。一〇メートル。安斉は後じさる。音源の位置を目で追う。どんどん近づいてくる。安斉のほうへ向かってくる。五メートル。来るなと安斉は叫ぶ。だが声にならない。三メートル。マンホールが今にも外れそうにがたがたと躍っている。なにか粘液質の音さえ聞こえてくる。来るな、来るなと繰り返す。マンホールのすぐ向こうまで近づいてきている。
 安斉は頭を抱えるようにして避けた。
 こおうっ!
 すぐ足の下を轟音《ごうおん》が走った。
 全身が音に包まれた。安斉は目を閉じた。
 膝《ひざ》がびりびりと震える。地面が縦揺れを起こしていた。安斉は音が遠くに去るまで目を開けることができなかった。通って行ったものの蠕動するような動きが体の中にいつまでも残った。内臓がぐらぐらとして定まらない。
 何だったのだ?
 いったい何が通っていったのだ?
 生き物だった。何かの生き物が地面の下を通って行った。あんな巨大なものが町の下水にいるということが信じられなかった。しかも意志を持ってこちらへ進んできていた。そのスピードには一片の躊躇も感じられなかった。
 しかし、なぜこの方向へ?
 安斉は目を開けた。振り返り病院の壁を見上げた。音はこの中へ入っていった。確かにこの病院を目指していた。
 すでに音は聞こえなくなっていた。気配が消えてしまっている。地面の外へ出たのだろうか。この病院の下水管の中に入ってしまったのか。
 ……麻理子。
 その名が浮かんだ。
 麻理子が危ない。
 なぜだかわからないがそう思った。あの音の主は麻理子を狙っている。
 安斉は時間外通用口へと体を翻《ひるがえ》していた。
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