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美女入門150

时间: 2019-08-22    进入日语论坛
核心提示:パーティの悪夢ニンシンしてから、一年近く続いた地味な日々は、はっきりと私を変えた。急に派手な場所が好きになったのである。
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パーティの悪夢

ニンシンしてから、一年近く続いた地味な日々は、はっきりと私を変えた。
急に派手な場所が好きになったのである。人は意外に思うらしいのであるが、私はそれまでかなりのパーティ嫌いであった。文壇関係のパーティでも、めったに行ったことがない。
「ヴァンサンカン」や「クラッシィ」などの、�パーティファッション拝見�のスナップを見るたびに、私とは関係ない世界だわ、フンと言ってたっけ。
その私が、つい先日、着席式のブラックタイパーティに出たことはお話ししたと思う。
「お料理もおいしかったし、結構たのしかったなぁー」
と思い出していたところ、仲良しのクミさんから電話がかかってきた。
「ブラックタイの、チャリティ・ディナーがあるんだけど、いらっしゃらない」
クミさんは、クリスチャン・ディオールの広報ディレクターをしている。「アンアン」の読者にはなじみがないかもしれないが、「ヴァンサンカン」「家庭画報」等の、おハイソコンサバ系雑誌のスターと言ってもよい。日本人離れしたゴージャスな美貌《びぼう》に、英語、フランス語を自由に操る国際感覚。日本でいちばんイブニングドレスが似合う女性である。私は声楽のお稽古《けいこ》を一緒にしていることもあり、たびたびクミさんのおうちへ行くが、そこでも、すごい世界が展開されているのである。居間は大理石の床で、クミさんはおうちにいる時も完璧《かんぺき》にメイクをし、ハイヒールを履いているのだ。うちにいる時もハイヒール! ネコの毛がついた五年前のワンピースをズルズルと着ている私とは、何という違いであろうか。
とにかくそのクミさんから、
「宮さまもいらっしゃるパーティだから、フォーマルでね」
と言われたのである。私はいろいろ考えた。たった一枚の黒のイブニングドレスは、このあいだのパーティで着てしまった。それならば、ダナの黒ラメのミニワンピースにしようかしらん。このワンピースは随分前に買ったものであるが、シンプルな形だから今着ても大丈夫。これに同じ素材を使ったジャケットでも羽織りましょう。するとうちの秘書が、
「すっごく暑苦しそう」
と言った。じゃ、ジャケットをやめて、オーガンジーのショールをまとおーっと。どうせ私なんか、みんな見てないんだしさあ。
とりあえず美容院へ行く。
「パーティに行くから、派手な形にブロウしてね」
鏡の前に「ヴァンサンカン」が置いてあった。いろんな雑誌とつき合いがあり、たいていの女性誌は送られてくるが、この「ヴァンサンカン」だけは、私と全く無縁のものである。が、私は「怖いもの見たさ」といおうか、この超ファンタジーの世界が結構好きで、美容院へ行くと手にとって見てしまうのだ。
今月の特集は「憧《あこが》れのスーパー読者」だって。「ヴァンサンカン」の読者は、美しくおハイソな方ばかりという記事が並んでいる。その中に、「出来上がったばかりのソワレを着て、パーティへ」というグラビアがあった。それが裾《すそ》をひきずるような本格的なものなのだ。
「えーっ、こういうもん着ていくわけ」
私は巻末の�パーティファッション拝見�のページをめくる。最近のパーティに来ていた人たちの格好が出ている。それがみんな裾までの豪華なものばかりなのだ。いくら人が見ていないといっても、ミニのワンピースで行ったら恥をかきそう。
「どうしよう、どうしよう」
大あわてで家へ帰ってきて、クローゼットの中をひっくり返す。大昔に買ったシャネルのサテンのプリーツスカートは、確か足首までの長いやつだったわ……。あー、でも私のだらしなさがたたって、くちゃくちゃになってる。他にロングはなかったっけ。こっちのスカートはすぐ着られそうなのだが、合うジャケットがない……。どうしよう、どうしよう……。時間は迫ってくる。着ていくものはない。女ならば経験あると思うが、悪夢のような時間だ。どんどん時間が迫ってくる。その時、私の指にひっかかるものがあった。ジョーゼットのロングコートである。薄い生地で出来たそれは、確か、
「コートドレスとして着てください」
とお店の人が言ってたような気がする。普段着るには雰囲気が違っていて、袖《そで》を通す機会もなくタグがついたままだ。私は黒ラメのミニドレスの上にふわっと羽織り、ベルトを締めた。
「これで、どうかしら」
「私は見たことないけど、ハヤシさんがいいと思うならいいんじゃないですか」
と冷たく言い放つ秘書。が、もう時間がない。そうよ、そうよ、パーティファッションなんて好きにしていいのよ。私なんか物書きなんだから、少々アヴァンギャルドな格好したって許してくれるわ。それでも会場に着いたとたん、どっと押し寄せてくる不安。すると向こうから、総ラメのイブニングに、オーストリッチのショールをまとった、花井幸子さんが歩いていらした。そうだ、本職の人に聞いてみれば間違いない。
「ハナイさん、これ着てていいの。おかしいなら脱ぐけど……」
「あら、着ててもいいのよ。素敵じゃない」
私は安堵《あんど》のあまり、思わず涙ぐみそうになったのです。
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