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美女入門151

时间: 2019-08-22    进入日语论坛
核心提示:元香港マダム・Sさんちへ行ったこのあいだお話しした、元香港マダムのSさんのところへ遊びに出かけた。何しろ、日本でいちばん
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元香港マダム・Sさんちへ行った

このあいだお話しした、元香港マダムのSさんのところへ遊びに出かけた。
何しろ、日本でいちばんエルメスを持っている人だ。エルメスばかりではない、プラダやシャネルもハンパじゃない数持っているという。それなりの心構えで行かなくてはいけないだろう。私はケーキを買い、グッチのバッグを持って都内の高級マンションを訪ねた。
まず玄関を開ける。靴箱に入り切れないぐらいの、すごい数の靴が並んでいた。私がおそらく一生履くことがないであろうマノロブラニクのピンヒールもいっぱいだ。
このマンションは外国人向けにつくられているので、一部屋がとても大きい。その一室を彼女は衣裳《いしよう》部屋にしていた。もちろんこれまた日本離れしたサイズのクローゼットもあるのだが、それに収まるはずがない。
噂には聞いていたが、エルメスはずらーっと二段並んでいた。一段目はケリー、二段目はバーキンである。が、最近はフェンディにも凝っているそうだ。三段目はコーナーになっている。日本でも、あっという間に売れてしまったという幻のデニムのものや、ビーズのパッチワークのものもいっぱい。もちろんシャネルのバッグは、やわらかい分、それこそ積み重なって並んでいるぞ。
次に洋服のラックを見て、それこそ私はめまいがしそうになった。グッチのオーストリッチのジャケット、エルメスの革ジャケットなんかが無造作にかけられているではないか。私は毛皮があまり好きではないが、フェンディのコートや、豹《ひよう》のロングコートにはやっぱりため息が出る。
Sさんは日本へ帰ってきたので、何かお仕事をしようかなーと考えているという。うんと高級なリサイクルショップを計画したのだが、あまりうまくいかなかったそうだ。
「だったら、自分のものを売ればいいじゃない。これだけあったら、店が二軒オープン出来るよ」
私が言うと、
「それも考えたけど、やっぱり嫌なの」
とSさん。
「だって、四十万、五十万で買ったものが、たった三万円とか四万円になっちゃうのよ。そんなの服が可哀相じゃない」
なるほどなあ、と思った。私が服を溜《た》め込む理由もそこにある。大切に使ってくれそうな身内や知人にタダであげるのはいいけれど、ちょっとのお金で他人に貰《もら》われていくのはせつない気がするの。
一緒に行った友人と三人、広いリビングでお茶をいただいた。彼女がコーヒーを淹《い》れている間、私たちは飾り棚をじろじろ見る。
「ねえ、ねえ、これって、本物かしら」
友人の手には親指の先ぐらいのダイヤの指輪が光っている。
「まさかあ、ニセものだよ。本物だったら、こんな絵皿の上にぽんと置いたりしないよ。それに大き過ぎるもの」
ところが彼女に聞くと、そのダイヤも、一緒に置いてある真珠もルビーもみんな本物だということだ。私はこんなにたくさんあるなら、一個ぐらい呑《の》み込んで帰ってもわからないのではないかとチラッと思ったりした……。
Sさんは、仲よしだった香港マダムの話をしてくれる。大富豪グループがあって、その奥さんたちを香港マダムと呼ぶのであるが、ほとんどが三十代。みんな留学経験があるので英語はぺらぺら、仕事を必ずといっていいぐらい持っている。ただの有閑マダムは無能と思われるのだそうだ。といっても、人に使われるようなことはしない。自分で何かビジネスを興すのだそうだ。
「でもね、ご主人の財産がハンパじゃないからね。買い物は思いっきりするわね。一回の買い物で四千万使った人もいるわ」
「す、すごい」
「でも別の友人は、ご主人のところへ水商売の女性から電話があったっていうことだけで怒ってね、あてつけにヴァン・クリーフへ行ったのよ。そしてダイヤのネックレスとイブニングを買ったんだけど、総額が一億二千万円」
こんな話になると、声も出ない。
ところでSさんの階下に、最近北川|悦吏子《えりこ》さんが引っ越してきた。お茶の後、皆でこちらの方へ遊びに行く。玄関を開ける。Sさんのところと同じ間取りとは思えない。Sさんのところは、イタリア製のソファセットを置いて、洗練されてゴージャスなインテリアを演出しているのであるが、北川さんは小さなお嬢ちゃんのために、全面フローリングでいかにもアットホームな感じ。ダイニングテーブルの他はほとんど家具を置かず、お子さんをのびのびと遊ばせるようにしているのだ。置いてあるおもちゃが、かわゆい。
まことに対照的な二つの部屋、そして二つの女性の生き方。が、どちらもカッコいいぞ。
世界を股《また》にかけて、スーパーリッチな暮らしを楽しみ、恋もいっぱいしているSさん。そして仕事も成功し、温かい家庭も築いている北川さん。どちらを選ぶかと問われたら、どちらも欲しいと答えたい。恋も諦《あきら》めたくないし、エルメスもフェンディも、もっともっと欲しい私なの。だけど淋《さび》しい時には家族が支えてくれる。とにかく私は欲張りなんだ。それが文句あっかと、高級マンションを後にした私である。女の生き方をいろいろ考えさせられたマンションであった。
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