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美女入門178

时间: 2019-08-22    进入日语论坛
核心提示:こんな男《ヤツ》がいなければ「おい、グッドニュースだぜ」テツオから電話がかかってきた。「ルミコさんが来日するからさ、あん
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こんな男《ヤツ》がいなければ

「おい、グッドニュースだぜ」
テツオから電話がかかってきた。
「ルミコさんが来日するからさ、あんたと対談してもらうよ。それからルミコさんに、美女になるメイク、っていうのをしてもらうんだぜ、すごいだろ」
ご存知のとおり、ルミコさんというのは、渡米して一流メイクアップ・アーティストになった伝説の女性である。最近は自分のブランド「RMKRUMIKO」も手がけて、これもすごい人気だ。ちなみに私のファンデーションは、この二年ぐらい「RMK」を使っている。薄づきでナチュラル。とってもいい感じだ。
ところでついこのあいだ、私の胸を痛める事件があった。某週刊誌の差別問題である。お正月特集号ということで、どこも大きな企画を組む。そこの週刊誌のグラビアは「ミレニアム美女」ということで、九〇年代を飾った美女たちをずらりと並べている。それはいいとして、同じ号で私は対談に出ているのである。新聞を広げてむっとした。私の顔写真も大きく広告に載っていて、その横にずらり「ミレニアム美女」が配置されている。ほぼ同じ大きさだ。それなのにちゃんと配慮されていて「混ざらないように」、線がひかれていたのである。
これって本当に失礼じゃないだろうか。私ひとりぐらい紛れ込んだとしても、何の違和感があるだろうか。こうなったら、ルミコさんによって、本物の美女にしてもらおう。
さてスタジオに現れたルミコさんは、年齢不詳、国籍不明、いってみればバービー人形のようにキレイな人である。真冬なのにノースリーブのニットを着てカッコいいぞい。片や私は、ここのところ会食続きで、毎晩のようにイタリアン、フレンチ、ワインと食していたから顔が丸くぽってりしている。大層恥ずかしい。
だけど眠りと栄養が足りているので、わりと肌の調子がいい感じ。ルミコさんはまんざらお世辞でなさそうに言った。
「ハヤシさんって、本当に肌がキレイですねえー。シミやシワが全然無いですね」
それから、私のメイクが始まった。私も何人もの一流ヘア&メイクアップ・アーティストと呼ばれる人に顔をいじってもらったことがある。嶋田ちあきさん、藤原美智子さんという、両巨頭にメイクしてもらった幸せ者である。が、ルミコさんは、その誰とも違っていた。わりと無造作に、自然な感じでメイクをしていく。たとえば、アイライン、リップのラインをひく時、日本の人はそれこそ息を詰めて、0・001ミリに命をかけて線をつくっていく。が、ルミコさんは違うのだ。楽しそうにお喋《しやべ》りしながらメイクが続く。私が思うに、彼女がいつも相手をしているスーパーモデルやハリウッドの女優さんたちは、ものすごくナーバスな人たちではないだろうか。そういう人たちに向けて、こちらがナーバスになると、むこうもピリピリしてくる。特に肌に触れる人というのは、その人の精神状態がそのまま伝わってくるものね。
ルミコさんは、あるスーパーモデルの話をしてくれた。やはりものすごく我儘《わがまま》なことを言うけれども、それは疲れているのと緊張しているせいだ。
「そういう時は、横になってもらって、寝たままメイクをしてあげるのよ」
だって。きっといろいろ大変なこともあるんだろうけれども、とてもナチュラルな女性である。そんなにお喋りもしないのに、一緒にいるとリラックス出来るやさしさが漂ってくる。
ルミコさんは言った。
「ハヤシさんって、目が大きくてとても可愛いわ。それよりもステキなのは唇ね。ぽってりしていていいわ、可愛いわ」
ルミコさんが正直で、お世辞なんか言えない人だということがすぐにわかった。それで私は尋ねてみる。
「肌もキレイで、目も可愛い。唇もステキ。それなのに私って、どうして人から美人って言われないんでしょうか」
一瞬沈黙があった。あれ、へんな空気。スタイリストのマサエちゃんも、ルミコさんのアシスタントもおし黙ってしまった。
ややあって、ルミコさんは口を開いた。
「それは……、自信がないからでしょう」
そうか、そうだったのね。長年の疑問がやっと解けたわ。そーよ、そーよ、世間じゃあのレベルで美人の称号を貰《もら》っている人もいる。私だってひるむことなく、図々《ずうずう》しく振るまえばよかったんだわ。
その日、すぐにテツオから電話があった。
「あんたって、つまんないことを言ったらしいな」
もう誰かが報告したのね。
「だけどルミコさんもさー、気の毒だよな。口が滑ってお世辞を連発したら、鋭いツッコミを入れられたんだからなあ」
ヒッヒッ、喜んでいる。なんてイヤな男なんだろうか。私は思う。こういう男の存在が私から自信を奪ったのだ。こういう男の言葉が、私を美女から遠ざけたのだ。
このルミコさんとの対談は、もう読んでいただけましたね。ちなみにルミコさんは顔が小さく、一緒に並ぶと私はとても不利であった。
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