むかし、フクロウが、染物屋をやっていました。いろいろの鳥がやってきては、羽《はね》やからだをそめてもらいました。
メジロは、羽をきいろくしてもらい、ブンチョウは、しっぽを白くそめ残して、喜んでいました。キジなんかは、羽を三色《みいろ》にも四色《よいろ》にもそめてもらって、大へんじまんにしていました。
カラスはそのころ、まっ白な鳥だったそうです。そこで自分も、きれいな模様《もよう》にそめてもらおうと、フクロウのところへ、たのみに行きました。
「フクロウさん、フクロウさん。ひとつ、わたしのからだを、きれいにそめてくださいませんか。キジやヤマドリなんかより、もっと、もっと、きれいにそめてもらいたいんです。」
「よろしい。」
フクロウは、自信ありげに、ひきうけました。
さて、そめるだんになったのですが、どうしたことか、フクロウは、染料《せんりよう》をまちがえてしまいました。
——しまった。
と、思いましたが、とりかえしがつきません。そめあがったところを見ると、カラスはまっ黒です。これを見たカラスは、腹《はら》を立てて、
「フクロウさん、これはどうしたんですか。わたしは、まっ黒にそめてくださいなんて、たのみませんでしたよっ。」
と、大きな声を出しました。しかし、もうどうすることもできません。ふたりは大げんかをして、わかれました。これにこりて、フクロウは、染物屋をやめてしまいました。
それからのち、フクロウは、昼間は外によう出られなくなってしまいました。出ると、カラスがやってきて、
「どうしてこんな色にした、どうしてこんな色にした。」
と、せめたてるからです。はずかしくもあるし、また、こわくもありますので、出られないんです。
それでも、あすは天気だな、と思うと、やっぱり染物屋のころのしごとを思いだして、
ノリツケホーセ ノリツケホーセ
と、歌をうたいますし、雨ふりだな、と思うと、
トーコン トーコン
と、鳴くのだということです。