一四 部落には必ず一戸の旧家ありて、オクナイサマといふ神を祀《まつ》る。その家をば大《だい》同《どう》といふ。この神の像は桑の木を削りて顔を描き、四角なる布のまん中に穴を明け、これを上より通して衣裳とす。正月の十五日には小字中の人々この家に集まり来たりてこれを祭る。またオシラサマといふ神あり。この神の像もまた同じやうにして造り設け、これも正月の十五日に里人集まりてこれを祭る。その式には白粉を神像の顔に塗ることあり。大同の家には必ず畳一帖の室あり。この部屋にて夜寝る者はいつも不思議に遭ふ。枕を反すなどは常のことなり。あるひは誰かに抱き起こされ、または室より突き出さるることもあり。およそ静かに眠ることを許さぬなり。