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遠野物語94

时间: 2019-08-25    进入日语论坛
核心提示:九四 この菊蔵、柏崎なる姉の家に用ありて行き、振舞はれたる残りの餅を懐に入れて、愛宕山の麓の林を過ぎしに、象《*ざう》坪
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 九四 この菊蔵、柏崎なる姉の家に用ありて行き、振舞はれたる残りの餅を懐に入れて、愛宕山の麓の林を過ぎしに、象《*ざう》坪《つぼ》の藤七といふ大酒呑みにて彼と仲よしの友に行き逢へり。そこは林の中なれど少しく芝原ある所なり。藤七はにこにことしてその芝原を指し、ここで相撲を取らぬかといふ。菊蔵これを諾し、二人草原にてしばらく遊びしが、この藤七いかにも弱く軽く自由に抱へては投げらるるゆゑ、面白きままに三番まで取りたり。藤七が曰く、今日はとてもかなはず、さあ行くべしとて別れたり。四、五間も行きて後心付きたるにかの餅見えず。相撲場に戻りて探したれどなし。始めて狐ならんかと思ひたれど、外聞を恥ぢて人にも言はざりしが、四、五日の後酒屋にて藤七に逢ひその話をせしに、おれは相撲など取るものか、その日は浜へ行きてありしものをと言ひて、いよいよ狐と相撲を取りしこと露顕したり。されど菊蔵はなほ他の人々にはつつみ隠してありしが、昨年の正月の休みに人々酒を飲み狐の話をせしとき、おれも実はとこの話を白状し、大いに笑はれたり。(注 象坪は地名にしてかつ藤七の名字なり。象坪といふ地名のこと『石神問答』の中にてこれを研究したり)
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