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遠野物語93

时间: 2019-08-25    进入日语论坛
核心提示:九三 これは和野の人菊池菊蔵といふ者、妻は笛吹峠のあなたなる橋野より来たる者なり。この妻親里へ行きたる間に糸蔵といふ五、
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 九三 これは和野の人菊池菊蔵といふ者、妻は笛吹峠のあなたなる橋野より来たる者なり。この妻親里へ行きたる間に糸蔵といふ五、六歳の男の児病気になりたれば、昼過ぎより笛吹峠を越えて妻を連れに親里へ行きたり。名に負ふ六角牛の峰続きなれば山路は樹深く、ことに遠野分より栗橋分へ下らんとするあたりは、路はウドになりて両方は岨《そば》なり。日影はこの岨に隠れてあたりやや薄暗くなりたる頃、後の方より菊蔵と呼ぶ者あるに振り返りて見れば、崖の上より下を覗くものあり。顔は赭《あか》く眼の光りかがやけること前の話のごとし。お前の子はもう死んでゐるぞといふ。この言葉を聞きて恐ろしさよりも先にはつと思ひたりしが、早その姿は見えず。急ぎ夜のうちに妻を伴ひて帰りたれば、はたして子は死してありき。四、五年前のことなり。
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