一一一 山口、飯豊、附馬牛の字荒川東禅寺および火《ひ》渡《わたり》、青笹の字中沢ならびに土淵村の字土淵に、ともにダ《*》ンノハナといふ地名あり。その近傍にこれと相対して必ず蓮台野といふ地あり。昔は六十を超えたる老人はすべてこの蓮台野へ追ひやるの習ひありき。老人はいたづらに死んでしまふこともならぬゆゑに、日中は里へ下り農作して口を糊《ぬら》したり。そのために今も山口土淵辺にては朝《あした》に野らに出づるをハカダチといひ、夕方野らより帰ることをハカアガリといふといへり。(注 ダンノハナは壇の塙なるべし。すなはち丘の上にて塚を築きたる場所ならん。境の神を祭るための塚なりと信ず。蓮台野もこの類なるべきこと『石神問答』に言へり)