一六 土淵村から小《お》国《ぐに》へ越える立丸峠の頂上にも、昔は石神があったという。今は陽物の形を大木に彫刻してある。この峠については金精神の由来を説く昔話があるが、それとよく似た言い伝えをもつ石神は、まだ他にも何か所かあるようである。土淵村字栃内の和野という処の石神は、一本の石棒で畠の中に立ち、女の腰の痛みを治すといっていた。畠の持主がこれを邪魔にして、その石棒を抜いて他へ棄てようと思って下の土を掘って見たら、おびただしい人骨が出た。それで祟りを畏《おそ》れて今でもそのままにしてある。故伊能先生の話に、石棒の立っている下を掘って、多くの人骨が出た例は小《お》友《とも》村の蝦夷塚にもあったという。綾織村でもそういう話が二か所まであった。