二四 鐘や釜の沈んでいるという淵沼の話は多い。土淵村字角《かく》城《じよう》の角《かく》城《じよう》館《だて》にあった鐘は、今はその前の鐘撞き堂の淵に沈んでいる。それで今でも時々は川の底で鳴ることがあるそうな。栗橋村初《はじ》神《かみ》の明神の淵には大釜が沈んでいる。御湯立の時に用いた釜であった。現に水の下に今でもよく見えている。その釜の中の水が濁ると、何か悪い事があるという。土淵村小《こ》烏《がら》瀬《せ》川の久《きゆう》手《て》橋の下の淵には、金《こん》色《じき》の仏像が沈んでいて、朝日の押《おつ》開《びら》きの時などに水の底に光っているのを見ることがある。この仏像は火《ひ》石《いし》の北川家が神道になる時に、家にあった仏像をここへ棄てたのである。