三九 昔この早栃に、おべんという女があった。家のあたりの沢川で大根を洗っていると、水底にぴかぴか光る物が沈んでいた。拾い上げて見ると、それは金であった。それではこの川のママを登って行けば必ず金山があるであろうと思って、だんだんと水上の方に尋ねて行くと、はたして六《む》黒《くら》見《み》山という処に、思った通りの金山があった。ところが悪者があってその話を聞き、金山を自分一人の物としようと企らんで、このおべんを殺してしまった。後に村の人がこの女の徳をたたえて、これを弁天として祀ることになった。今の弁天山がすなわちそれである。男がこの山に登れば必ず雨が降るという。