四二 この地方で雨乞いをするには、六角牛山、石神山などの高山に登り千駄木を焚《た》いて祈るのが普通だが、また滝壷の中へ馬の骨などを投げ込んで、その穢《けが》れで雨神を誘う方法もある。松崎村字駒木の妻《さい》ノ神《かみ》の山中には小池があり、明神様を祀ってある。昔からこの池に悪戯《いたずら》をすると雨が降り、またその者にはよい事がないと言い伝えているが、近所の某という者そんなことがあるものかと言って、池の中に馬の骨や木石の類を投げ込んだ。するとこの男はその日のうちに気が狂って、行方不明になった。村じゅうの者が数日の間探し廻って見つからなかったが、半年以上も過ぎて池の周りの木の葉がすっかり落ちてしまうと、そこの大木の上にこの男が投げ上げられたような恰好で、もう骨ばかりになって載っているのが発見せられたという。