五五 琴畑の部落の入口の塚の上にある、三尺ばかりの不恰好な木像なども、同じように子供が橇にして雪すべりをしていたのを、通りかかった老人が小言を言って、その晩からたいへんな熱病になった。せっかく面白く遊んでいるのをなぜに子供をいじめたかと言って、ごせを焼いたという話がある。この森が先年野火のために焼けて、塚の上の神様が焼傷《やけど》をなされた。京都にいる姉この処さ飛んで行くべと思って飛んだども、体が重くてよく飛べなかった。ただごろごろと下の池まで転げ落ちて、たいへんな怪我をなされたのだそうな。誰がこんなことを知っているのかというと、それは皆、野崎のイダゴ(巫女)がそう言ったのである。