一三一 金の鶏や漆万杯の話がある館跡はいくつもある。土淵の一村だけでも、字角城の角城館、下栃内の八幡沢館などいずれも松の根を掘りに行って壷《つぼ》を見つけたとか、放れ馬の蹄《ひづめ》に朱漆がついて帰って来たとかいう口碑がある。また字琴畑の奥の長者屋敷には、五つ葉のウツギがあって、その木の下には宝物が埋まっていると伝えている。字山口の梵字沢館にも、宝物を匿《かく》して埋めた処があるという。堺《さかい》木《げ》の乙蔵爺が死ぬ前に、おればかりその事は知っている。誰か確かな者に教えておきたいと言っていたが、誰も教わりにゆかぬうちに爺は死んでしまった。