二六三 死人の棺の中には六道銭をいっしょに入れる。これは三途の河の渡し銭にするためだといわれる。また生まれ変わってくる時の用意に、親類縁者の者たちも各々棺に銭を入れてやるが、その時には実際よりもなるべく金額を多く言うようにする。たとえば一銭銅貨を入れるとすれば、一千円けるから今度生まれ変わる時には大金持ちになってがいなどという。また米麦豆等の穀物の類も同じような意味で入れてやるものである。先年佐々木君の祖母の死んだ時も、よい婆様だった。生まれ変わる時にはうんと土産《みやげ》を持ってきなさいと、家の者や村の人たちまでが、かなりたくさんな金銭や穀類を棺に入れてやったということである。