二七六 十日の晩の大黒様の年取りには枝大根を神前に供える。伝説には大黒様がある時あまり餠を食べすぎて死にそうになられた時、母神は早く生大根を食べるように言われたが、あいにく大根がなかったので道みち尋ねてゆかれると、川傍で一人の下婢が大根を洗っているのに行き逢われた。大黒様がそれを一本くれと言われると、女はこれは皆主人から数を調べて渡された物だから上げるわけにはゆかないと答えた。それでたいへん落胆しておられると、下女が言うには、君さま心安かれ、ここに枝大根があればと言って、折って差し上げたので、大黒様は命拾いをされたと言い伝えている。