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月蝕姫のキス01

时间: 2019-09-15    进入日语论坛
核心提示:置き忘れられたプロローグ生まれて初めて、自分の手でマッチに火をつけたときのことを覚えているだろうか。ぼくははっきり覚えて
(单词翻译:双击或拖选)
 置き忘れられたプロローグ

生まれて初めて、自分の手でマッチに火をつけたときのことを覚えているだろうか。
ぼくははっきり覚えている。マッチなんて理科の実験で初めて使ったなんて人も、まわりには多いけど、ぼくの場合は小学校のまだ低学年のときだった。
大人たちが、いろんな場面でそれを使っているのを見て、自分もいつかはと思っていた。年上の人たちが当たり前のようにやっていて、でも自分はしたことのない事柄《ことがら》の一つとしてね。
たまたま自分ちのトイレに小箱入りのが落ちているのを見て、つい手に取ってしまった。いや、落ちていたのではなくて、父が中でタバコを吸ったついでに置いて行ったんだろう。
おそるおそる取り出した軸木《じくぎ》の先っぽを、外箱の茶色いような紫《むらさき》っぽいような部分——それぞれ頭薬《とうやく》と側薬《そくやく》っていうそうだけど——に、そっとこすりつけてみた。大人たちの手つきや、テレビの場面を思い出しながらね。だが、何ごとも起こらない。
もう一度、今度はやや強く。やっぱりだめだ。三度目、パッと小さな火花とともに煙《けむり》が立ち昇り、びっくりして手を離《はな》してしまったが、火がついたかどうかもわからないぐらいで、でも床《ゆか》のタイルに落ちたマッチの先っぽは確実に黒くなっていた。
そのときはそれでおしまいだったが、ちゃんと火がつくようになるまでに時間はかからなかった。でも、裏庭で試してみた燃えがらを、そのまま地面に捨てたりしたものだから、とうとう母に見つかって大目玉をくらった。いま思えば、当然の話だ。
マッチにまつわる思い出というのは、それだけだ。そのあと、火事を起こしかけたとか、やけどしたとかいうこともない。熱い思いをしたことは何度もあったが。
だが、ぼくは今も忘れられずにいる。その何度目だったかは忘れたが、初めて自分の手の中で小さな炎《ほのお》が燃え上がり、そのまわりに光の暈《かさ》が広がったときのことを。
そのとき味わったのは何か甘く、ドキドキする気分で——などというと放火魔のようだけれど——半面、はかなく切ない感じがした。
その後、日常生活でマッチを使うことは、意外なほど少なかった。火をつけるためならライターや着火器はいくらでもあるし、それさえ必要としない場合も多い。タバコでも覚えていれば別だったろうが、ぼくはあいにく吸ったことがない。
だが……このときの、パッと光を放つマッチのイメージは、意外な形で、それも繰り返しよみがえることになる。ただし、ぼくの心の中、脳内スクリーンに限ってのことだが。
その炎は、何かのひらめきが生まれたときに、ぼくの頭の中できらめく。だが、それはあまりに無力で、無意味だった——それこそ、幾千《いくせん》幾万本のマッチに火をつけたみたいな紅蓮《ぐれん》の炎の前では。
 ——それは、初めてマッチを手にした日から十年後に、ぼくが目の当たりにした光景だった。
燃え上がる壁《かべ》、焼け落ちる柱や梁《はり》、火柱を吐《は》いて崩《くず》れる屋根。まるでトランプの家を突《つ》き壊《こわ》してゆくみたいに、一つまた一つと建物が猛火《もうか》と白熱の光にのみこまれてゆく。
その一部始終を、ぼくは間近にあって火の粉《こ》を浴び、熱風をまともに受けるよりも生々しく見つめていた。どうしようもない無力感と罪の意識にさいなまれながら、総身にからみついてるはずの痛みも感じる余裕のないままに。
といっても、幼い日のマッチ遊びが高じて、とうとう大火事を起こしたわけではない。いや、いっそそうだったなら自業自得、いさぎよく罪を認め、罰《ばつ》に服しもしよう。
だけど、そうではないのだ。それどころか、ぼくは何とか防ごうとしたのだ。防げるかもしれないと、はかない期待を抱《いだ》いていたのだ、このカタストロフを、自分なりの知恵のきらめきでもって。
つくづく、ぼくはバカだった。バカの国があったら、王様になれるほどに。だって、そうじゃないか——悲しいぐらいちっぽけなマッチ一本の炎で、こんな地獄《じごく》の業火《ごうか》に立ち向かい、封《ふう》じ込《こ》めることができると夢想しただなんて。しかも、よりによって、このぼくが!
悪い冗談《じょうだん》、とんだ妄想《もうそう》……だが、そう言って笑い飛ばすには、目の前の地獄絵図は否定しようのない現実だった。
どこかで、誰かの悲鳴らしい声が聞こえたような気がした。
(まさか、ひょっとして——?)
ぼくはハッとわれに返った。そのとたん、半ば忘れかけていた五官の感覚がよみがえり、と同時にここに至るまでの出来事が、奔流《ほんりゅう》のようによみがえってきた——。
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